2019-02

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☆☆☆(小説)

小説 「時をかける少女」 筒井康隆 星3つ

1. 時をかける少女1967年刊行ながら夥しい数のメディアミックスによって今日においても有名タイトルとなっている作品。その中でも、1983年に原田知世さん主演で公開された実写版と、2006年に細田守監督の指揮によって製作されたアニメ版という二つの映画が知名度の牽引役となっております。アニメ映画は本ブログでも以前に感想を書きました。原作たる小説は僅か100ページ余りの作品であり、文体や展開も非常にあっさりとしたものでしたが、ここが斬新だったのだろうと思わせる点がいくつかあり、派生作品がいくつもある現代だからこその読み応えがありました。2. あらすじある日、中学3年生の芳山和子(よしやま かずこ)は、同級生の深町一夫(ふかまち かずお)・浅倉吾朗(あさくら ごろう)と一緒に理科室の掃除をしていた。掃除を終え、隣の理科実験室に用具をしまおうとすると、理科実験室から奇妙な物音が聞こえてくることに和子は気づく。恐る恐る理科実験室の扉を開ける和子。しかし、和子が明けた瞬間に中にいた人物は別の扉から逃亡したようで、残っていたのは液体の入った試験管だけ。しかも、試験管の一つは割れて液体が床にこぼれてい...
経済・金融・経営・会計・統計

新書 「中国経済講義」 梶谷懐 星3つ 第6章・終章

1. 中国経済講義 前稿である「第4章・第5章」の続きです。前稿はこちら。 2. 目次 序章 中国の経済統計は信頼できるか第1章 金融リスクを乗り越えられるか第2章 不動産バブルを止められるか第3章 経済格差のゆくえ第4章 農民工はどこへ行くのか第5章 国有企業改革のゆくえ第6章 共産党体制での成長は持続可能か終章 国際社会のなかの中国と日中経済関係本記事で感想を述べるのは第6章と終章です。第6章 共産党体制での成長は持続可能か 大きく出たなぁというタイトルですが、中国崩壊論の極北はここに辿り着きますよね。とにかく、共産党独裁体制が持続するはずもなく、崩壊時のカタストロフィに中国経済は耐えられない、という理論です。本書でも、「財産権保護」や「法の支配」に欠けていること、「政府による説明責任なき市場介入」などを理由に主流派の経済学者は持続不可能だとする見解をとっていることが冒頭で挙げられます。そういった社会経済体制では、例えば特許などが適切に保護されなかったり、相互信頼の欠如から取引が滞ったりする恐れがあり、それが経済発展やイノベーションを阻害する、というのが経済学における王道の考...
経済・金融・経営・会計・統計

新書 「中国経済講義」 梶谷懐 星3つ 第4章・第5章

1. 中国経済講義 前稿である「第2章・第3章」の続きです。前稿はこちら。 2. 目次序章 中国の経済統計は信頼できるか第1章 金融リスクを乗り越えられるか第2章 不動産バブルを止められるか第3章 経済格差のゆくえ第4章 農民工はどこへ行くのか第5章 国有企業改革のゆくえ第6章 共産党体制での成長は持続可能か終章 国際社会のなかの中国と日中経済関係本記事で感想を述べるのは第4章と第5章です。第6章以下は次稿に続きます。第4章 農民工はどこへ行くのか 中国の労働・貧困問題の象徴として取り上げられることの多い「農民工」と呼ばれる人々。低賃金で3K的な労働を行う都市の貧困層、という切り口はステレオタイプ的な分かりやすさもあってドキュメンタリーなんかでもテーマとして採用されることが多いような気がします。日本の高度経済成長期に出稼ぎのため東京や大阪に出てきた人々の姿と被るという点も、文脈を把握できている気になる要因なのかもしれません。この第4章はそんな「農民工」にまつわる様々な問題が列挙されているため、一言で結論を述べることは難しいのですが、①中国の労働市場は「ルイスの転換点」を迎えつつある、...
経済・金融・経営・会計・統計

新書 「中国経済講義」 梶谷懐 星3つ 第2章・第3章

1. 中国経済講義 前稿である「序章・第1章」の続きです。前稿はこちら。2. 目次序章 中国の経済統計は信頼できるか第1章 金融リスクを乗り越えられるか 第2章 不動産バブルを止められるか 第3章 経済格差のゆくえ 第4章 農民工はどこへ行くのか 第5章 国有企業改革のゆくえ 第6章 共産党体制での成長は持続可能か 終章 国際社会のなかの中国と日中経済関係 本記事で感想を述べるのは第2章と第3章です。第4章以下は次稿に続きます。 第2章 不動産バブルを止められるか 最近の「中国崩壊論」の主流といえばこれではないでしょうか。投機にだけ使われる居住者のいない集合住宅。いわゆる「幽霊マンション」などがいかにも悪質なバブルを象徴しているように描かれることが多い気がします。不動産の値上がりのせいで住居をなかなか見つけられない都市部の庶民が抱える不満という切り口もありますね。 もちろん、「幽霊マンション」や「鬱憤を溜める庶民」の実在を否定するつもりなど毛頭ありませんが、本書の良いところは「そもそも不動産市場への過度な投資が行われるのはなぜなのか」から出発する点です。それは、「中国人が馬鹿だ...
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