2018-12

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Paradise Kiss

漫画 「Paradise Kiss」 矢沢あい 星3つ

1. Paradise Kiss「NANA」で有名な少女漫画家、矢沢あいさんの作品。祥伝社が刊行していたファッション誌「Zipper」に連載されていたという異色の漫画で、内容も普通の高校生だった主人公がファッション専門学校の生徒たちとの交流を経て変わっていくというファッション誌らしいストーリー。もちろん、登場人物たちの服装はいかにもという感じで、大阪モード学園に通っていたという矢沢さんの面目躍如だといえるでしょう。(少女漫画であっても)漫画の登場人物の服装は総じてダサいのが一般的なので、この洗練されたファッションセンスだけでもこの作品の特異性が分かるというものです。「天使なんかじゃない」のレビューではやや辛辣な感想を述べましたが、矢沢さんの作品では「現実的なふりをしたありえない学園生活」よりも「芸術家たちの日常と葛藤」を描いているものが面白いですね。もちろん服飾面だけでなく、ストーリーもなかなか良いものだったからこその星3つです。進学校に通いながらも大学受験に意義を見いだせない主人公、全く違う世界を生きる専門学校生たちとの出会い、自分の可能性を広げていってくれる仕事や恋愛、待ち受ける親...
☆☆☆(教養書)

新書 「忘れられた日本人」 宮本常一 星3つ

1. 忘れられた日本人国際化が進み世界的に人の交流が活発になっていく中で、国境の存在感がますます曖昧になっている現代。欧米では移民に対する反発を通じて、「~国民であること、~民族であること」を強調する集団が力をつけてきています。日本でも観光客のみならず、事実上定住している外国人の数は増え続けており、更に外国人労働者の受け入れ条件が緩和されるなど、国際化の波に乗ろうとしているわけですが、その一方で、外国人への侮蔑的な発言を公然と行う人も、SNS上であれ、路上であれ、増加しているように感じます。もちろん、日本人のマジョリティとは異なる文化的背景の中で育ってきた人々の数が増えてくれば、 お互いの文化が溶け合って、折衷的な良い新文化が生まれることも期待できる一方で、 既存の日本的文化との軋轢も当然に生まれてくるでしょう。そういった点で、差別心とまでは言わないまでも、日本人的に暮らしてくれないなら、日本のルールを守ってくれないなら(この「ルール」は法律というより慣習のことです)、来てくれなくてもいい、あるいは、来るのは仕方がないが、既存の秩序や生活が乱されないか心配だと思う人がいるのもある程度自...
人魚シリーズ

「人魚シリーズ」 高橋留美子 評価:2点|大人気漫画家が描くグロテスクな伝奇調物語【短編漫画】

「うる星やつら」や「らんま1/2」、「犬夜叉」といった代表作を持つ人気漫画家、高橋留美子さん。本ブログでも「めぞん一刻」を評価5点でレビューしておりますが、漫画家としての極めて高い実力は改めて言及するまでもないことでしょう。そんな高橋留美子さんの作品の中でも、かなりマイナーな位置づけにあるのがこの「人魚シリーズ」。「週刊少年サンデー」に不定期連載されているのですが、第1話である「人魚は笑わない」の掲載が1984年、最新話である「最後の顔」の掲載が1994年となっていて、ここしばらく新しい話が出てきていません。加えて、ややグロテスクな表現が多く、後ろ暗い作風が高橋留美子さんの普段の漫画作品とは一線を画しています。「大衆受けを狙わず、書きたい話を書きたいときに書いた」結果の産物という印象です。そして、そういった作品にこそ興味を抱くのが本ブログなのですが、読んでみた結果としてはイマイチな作品という感想。単に「暗くてグロテスク」を超えるような、「物語」としての魅力を見出すことはできませんでした。あらすじ1980年代の日本、浮浪者のような姿をした青年が一人、人魚を求め無人島とされている島を訪れる...
☆☆(映画/アニメ)

アニメ 「プラネテス」 監督:谷口悟朗 星2つ

1. プラネテス幸村誠さん原作の漫画をサンライズがアニメ化した作品。サンライズといえば「ガンダム」シリーズが有名ですが、同じ宇宙を舞台にしていても激しいロボットバトルではなく、リアル志向のお仕事アニメになっています。幸村さんは現在連載中の「ヴィンランド・サガ」で有名ですが、その硬派な作風はこの「プラネテス」にも表れています。監督の谷口悟朗さんは「コードギアス 反逆のルルーシュ」が代表作として知られているのではないでしょうか。コードギアスのようなぶっ飛びエンターテイメントから本作のような堅いヒューマンドラマまで作風の広さが伺えます。感想としては、なにもかも「普通」で、捻りがなさすぎるのではないかと思いました。2003~2004年にかけて放送された作品なので、当時としても凡庸だったのではないかと感じます。「ハルヒ」以前ではありますが、「エヴァ」以降ではあり、ただ分かりやすいだけのストーリーが受け入れられる環境は過去のものになっていたはずです。人が抱える割り切れなさ、単純ではない社会を、それに相応しい手法で描かなければならない、という前提に立つ段階まで日本アニメの脚本レベルは求められていたは...
ボヘミアン・ラプソディ

「ボヘミアン・ラプソディ」ブライアン・シンガー 評価:3点|「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーの情熱と悲愴を描いた伝記映画【海外映画】

1970~1980年代に活躍したロックバンド、「クイーン」のボーカルだったフレディ・マーキュリーの生涯を描いた伝記映画。現在も日本全国で公開中ですが、既に2018年を代表する大ヒット映画と呼べるほどの興行収入を挙げている作品です。公開後にSNSで大きく話題になったことから、公開から日を重ねるごとに観客が増えていくという現象が起きているらしく、まさに二十一世紀型の大ヒットだと言えるのではないでしょうか。平成最後の年だから思うのかもしれませんが、インターネット隆盛時代だからこそのヒットコンテンツなのかもしれません。というのも、本作はストーリーよりもライブシーンに強く惹かれるタイプの作品であり、まさに「臨場感」が売りの作品だといえるからです。消費が「モノ」から「コト」に移っているとも評される今日ですが、実際、音楽業界でもCDの売り上げが落ちならがらもライブの売り上げが伸びているようです。伝統的な祭りが衰退し、日常でも空気感による抑制で羽目を外しづらくなったいま、「集まって騒ぐ」という機会が希少価値として高まっているのかもしれませんね。個人的にもライブシーンには感じるものがありましたが、やはり...
谷崎潤一郎

小説 「細雪」 谷崎潤一郎 星3つ

1. 細雪戦前から戦後にかけて活躍した小説家、谷崎潤一郎。いまなお評価が高く、ファンの多い彼の代表作ともいえる作品が「細雪」です。新潮文庫版は上中下巻の構成で出版されておりまして、執筆に4年を費やしたという大作。映画化3回、テレビドラマ化6回という数字が文学の古典ながら世俗にも通じる魅力をもった作品であることを表していますね。やや冗長な表現や本筋から外れたエピソードなどが多いながら、やはり読みごたえのある作品だったというのが感想です。もちろん、そういった冗長さや寄り道部分を評価する人もいるでしょうから、私の星3つという評価が低すぎると感じる人はいても高すぎると思う人は少ないのではないのでしょうか。凋落しつつある旧家の娘が結婚相手を探すというストーリーは婚活全盛の今日においてむしろ示唆的ですらありますし、人物の描かれ方の今日との対比という点でも深く読み込んでいける作品だと感じました。2. あらすじ(上巻)時代は1930年代、蒔岡家の次女幸子は芦屋に暮らしていた。同居するのは夫であり婿養子でもある貞之助と、一人娘の悦子、そして蒔岡家の三女である雪子に、四女の妙子。幸子の祖父の代には大阪の船...
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