1. 夜間飛行
「星の王子さま」で有名なサン・テグジュペリの作品。飛行機乗りだった当人にとっては、こちらこそまさに本職の小説でしょう。
過酷な任務に挑戦する男たちが時代の新境地を拓いていく様子。それが淡々とした筆致で、しかし、情熱的に叙述されるのは見事でした。
2. あらすじ
郵便飛行業の黎明期。いまだ夜間飛行が危険視され、その実施について議論があった時代。
パタゴニアからブエノスアイレスに向かう一機の郵便機が嵐に突入してしまう。真っ暗な視界、途切れがちな地上からの連絡。
操縦士ファビアン、会社の支配人リヴィエール、リヴィエールの部下ロビノー。三者三様の長い夜が幕を開ける.......。
3. 感想
男たちの静かで熱い物語。その言葉がこれほど似合う作品もないでしょう。
より抑制的な「プロジェクトX」であり、その抑制がかえって溢れんばかりの人間性を際立たせています。
特に素晴らしいのが、飛行機からの情景描写と支配人リヴィエールの人物造形。
南米の豊かな自然や村落を見下ろす視線で描きながら、そこに孤高なパイロットの心情を絡める描き方はまさにサン・デグジュベリにしかできないものです。
そして、厳しくも確かな温かさを持ったリヴィエールの台詞もまた心に残ります。
「部下の者を愛したまえ。ただそれと彼らに知らさずに愛したまえ」
リヴィエールの独特な誠実さこそが、過酷な「夜」に対する勝利への秘訣なのです。
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