1. もののけ姫
言わずと知れたジブリの名作です。未見だったことを恥じる傑作でした。
2. あらすじ
舞台は中世の日本。辺境の村に住む青年アシタカは、村を襲ったタタリ神(大イノシシ)を退治した際に負傷する。タタリ神から受けた傷は死を招く呪いであり、アシタカは呪いを解くため、タタリ神の死体から摘出された銃弾のルーツを探す旅に出た。
道中で出会ったジコ坊という僧侶の助言を受け、アシタカは神が住むとされる森に向かう。森の中で負傷した男たちに出会ったアシタカは、男たちを彼らの村に連れて帰る。その村こそ、製鉄業で収入を得ているタタラ場という村だった。
製鉄のために木材を必要とするタタラ場は森から木を伐り出す必要がある。そのため、タタラ場の主であるエボシは森の主であり森を守る存在であるシシ神殺しを画策していた。そのエボシの命を狙いにやって来るのが、森で育った少女、サンだった。
人間にも獣にもなりきれない、「もののけ姫」のサン。
彼女とアシタカ、そしてタタラ場と森の運命やいかに。
3. 感想
アニメーションのすばらしさは素人目にも屈指のもの。雄大な自然はもちろん、人々の生活のすみずみまで丁寧に描かれています。
加えて、ストーリーも深く重みがあります。
森を襲おうとするタタラ場は「自然」という観点で見れば悪役ですが、人道という観点からはそうではありません。迫害や差別を受けてきた女性や障がい者たちが集まり、エボシの指揮を受けながらそういった人々のための働き口として成長してきたタタラ場もまた弱者のための存在です。
しかし、そのタタラ場から供出される鉄を買うのは武士たち。彼らの引き起こす戦乱がまた別の場所で弱者を苦しめてもいます。さらに、武士たちはタタラ場から鉄を買うには飽き足らず、タタラ場そのものを征服して鉄の供給を得ようとしている。武士たちに対して反乱を起こす力を蓄えるためにも、タタラ場にとって森の制圧は必要不可欠。
そして、その対立の中で自己のアイデンティティに悩むサンの姿も悲痛なもの。獣になりきろうとする姿は哀れであり、獣であることを諦めない姿は美しいのです。
しかし、本作の「強さ」はそういった二項対立を突き崩す構図だけにあるのではありません。
実際に戦いの口火を切るのは、朝廷から派遣されシシ神殺しを行おうとする集団と、人間に退治されたことを恨み、わざわざ復讐しにやってきたタタリ神の仲間たちです。市井に生きる人々の苦悩などなんのその、ただ強い者たちがより強くなるためだけに戦いを始めてしまう。
そして、それぞれが抱える葛藤に対して答えを出せないまま、否応なく戦いに巻き込まれるアシタカとサン。深い構図が幾重にも挿入されているにもかかわらず、非常にテンポよく軽快に進むストーリー。惹きこまれずにはいられません。
まさに名作とはかくあるべきという作品です。
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