【失敗したコミカライズ】漫画「電車男」原秀則 評価:1点【青年漫画】

電車男漫画
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あらすじ

主人公は秋葉系オタクの「電車男」。

ある日、秋葉原から帰る電車で「電車男」は暴漢に出くわす。

酔っぱらって女性に絡む暴漢に対して誰もが見てみぬふりをする中、「電車男」は勇気を振り絞って声を挙げ、その女性や乗客たちが助かるきっかけをつくったのだった。

後日、そんな「電車男」の自宅にHERMESのティーカップが届けられる。

送り主はあの車両に乗っていた美貌の若い女性。

伝票には電話番号が記載されており、「電車男」は女性の意図について思い悩む。

パソコンの電源を点け、事の顛末を「2ちゃんねる」に書き込んだ「電車男」。

彼が立てたスレッドへ馳せ参じたのは、お互いに顔も声も本名も知らないインターネット掲示板の住民たち。

ティーカップのブランドにちなんで「エルメス」と掲示板内で呼ばれるようになったその女性へのアプローチを住民たちは「電車男」に勧めるのだが......。

感想

インターネット掲示板「2ちゃんねる」での書き込みをもとにした恋愛物語という触れ込みで話題となった作品。

小説、漫画、映画、そしてテレビドラマと様々なメディアミックスがなされています。

特に伊藤淳史と伊東美咲主演のテレビドラマ版は大ヒットし、視聴率は平均で20%を越えたほどです。

気弱なオタク男性と典型的な美女がひょんなことから出会い、恋に落ちていく。

そんなありがちな展開ながら、当時は現在よりも輪をかけてキワモノ扱いだったインターネット掲示板を物語のギミックとして上手く使用したことで評判となりました。

インターネット住民たちに応援されながら恋愛を通じて成長していく主人公への共感と、インターネット住民たちが行う「インターネットを通じた応援」の独特さ、そして、主人公の行動から勇気を得て変わっていくインターネット住民たちの人生という二重三重の面白さが小気味のよいエンタメを提供しつつ、それでいて物語の芯には真っすぐすぎるほどの純愛が据えられているという点で斬新だったのです。

さて、本作はそんな「電車男」の漫画版なのですが、感想としてはとても残念なものでした。

私は小説版を読んだこともなければ当時の「電車男」スレッドをリアルタイムで見ていたわけでもないのですが、それでも、これでは「電車男」の魅力を一切描いていないじゃないかと言えるような代物で、悪い意味での換骨奪胎メディアミックスとなっています。

あらゆる意味で薄口過ぎて、「電車男」のあらすじをなぞった別の何かになっているのです。

確かに、金持ちお嬢様の「エルメス」と出会って、「電車男」がちょっとずつ恋愛に前向きになっていって、インターネットの住民たちがそれを支えてという構図自体は間違いなく「電車男」なのですが、重要な何かが欠けています。

何が欠けているんだろう、とぼんやりと考えてみたのですが、整理するとそれは以下の三要素に分けられる気がします。

①オタク感がない

これは何も、アニメやゲーム、フィギュア好き描写が足りていないと言っているのではありません。

本作の軸である恋愛についてのオタク感が足りないと思ったのです。

恋愛に奥手で女性と話したことはほとんどなく、服装にも無頓着。

そんなオタクならではの生々しい描写が本作にはほどんどありません。

女性に会うと緊張する、女性の態度がそっけないと落ち込む、といった程度の抽象的な描写が多く、痛々しいほどに失敗してしまう会話や、髪を切るのにも服を買うのにも動揺してしまい奇妙な行動をとってしまうような、そういったパンチの効いたエピソードが挟まれないため、本作の「電車男」はオタク趣味のある一般男性(あるいは一般以上の男性)になってしまっています。

オタク趣味の物を収集し、オタクのような恰好をしているだけで、中身はいたって普通の男性なのです。

「電車男」ならではの、恥ずかしいばかりの極端さがそこにはありません。

さらに、恋愛の困難を乗り越えた先にある女性との楽しい会話さえ、なんとなくの雰囲気描写がされるだけで、彼の中で生まれる「女性と会話して楽しい」という感情の手触りがまるでありません。

とにかく描写や演出が下手すぎなのです。

極度に抽象化された一般恋愛漫画を読んでいるように感じられ、「電車男」としての独自な細部が皆無です。

②インターネット感がない

インターネットの住民たちやその書き込みに全くリアル感がありません。

単に気のいい友人たちが恋愛を励ましてくれているというだけで、的を射ていたり見当はずれだったりが極端な言説や、匿名掲示板での恋愛談義だからこそ生まれる論争の生々しさがありません。

ネットスラングの使い方もとりあえず使ってみましたという程度で、インターネット掲示板独特の下品な皮肉だったり、AA(アスキーアート)を使った軽妙で芸術的な激励や祝福など、「2ちゃんねる」的な面白さがまるでないのです。

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