1998年公開のアメリカ映画。
ある凡庸な男の人生が本人には知らされることなく全世界に放映されている、という突飛な設定が関心を惹く作品です。
監督は「いまを生きる」等の作品で知られるピーター・ウィアー。
“Yes Man”の主演等で知られるジム・キャリーが主人公のトゥルーマンを演じています。
全体的な感想としては、初期設定の面白さはよく効いていたものの、その突飛な設定から展開される面白さ以上の工夫がやや薄く感じられました。
あらすじ
主人公の名前はトゥルーマン・バーバンク。
離島に存在する小さな町、シーヘブンで保険会社に勤務する30歳の男性である。
凡庸ながら幸福な日常を送る彼の人生には、他の人の人生とは決定的に異なっている点があった。
それは、このシーヘブンという街自体がリアリティ番組のセットであり、彼の人生は30年に及ぶリアリティショーとして世界中に放映されているという点。
トゥルーマンは30年間この事実に気づかないでいたが、番組側のミスが重なり、トゥルーマンは徐々に世界の「おかしな」在り方に気づいていく。
真実を知ろうと敢えて奇行を繰り返すトゥルーマン。
数奇な人生を送る彼が最後に導き出した答えとは……。
感想
気軽に楽しめる作品で、肩の力を抜きながら鑑賞し、最後にほろっと感動するような映画になっております。
トゥルーマンが世界の「おかしさ」に気づくまでの過程がやや長く、平凡な男の凡庸な日常が垂れ流されるだけなので少し退屈なのですが、トゥルーマンが世界の「おかしさ」に気づき始めてからはテンポ良く話が進み、夢中になって鑑賞できます。
これまで経験してきた恋愛や友情を信じられなくなっていくトゥルーマン。
それでも、これまで自分を支えてくれた周囲の人々に対する熱い感情だって持っている。
疑念と信用とのあいだで葛藤するトゥルーマンの心理は見ごたえがあります。
同じ状況に陥ったら、自分もこんなふうに疑心暗鬼な心情になってしまうのだろうな、と思わせるようなリアリティの醸し出し方が上手いのです。
また、トゥルーマンの人生を「番組」として楽しんでいる人々や、キャストとして出演している人々の反応や行動の描き方も巧妙です。
「他人の生々しい人生」を覗き見することで興奮を覚えてしまう私たち大衆の衆愚的な心理、番組側の意図に沿わず、勝手な行動をしてしまうトゥルーマンの「父親」、番組が持つグロテスクな性質に反発を覚え、トゥルーマンに真実を教えようとしてキャストをクビになったトゥルーマンの「元恋人」。
人間の持つ身勝手さが随所で強調される一方、人真実探求への執念や、誰かを助け出そうとする利他心も強調されており、人間の様々な側面を描く「ヒューマンドラマ」としてよくできた作品に仕上がっています。
ただ、名作・傑作とするにはいまひとつパンチが足りない面があるのも事実です。
というのも、ある男の人生が世界中にリアリティ番組として放映されている、という初期設定の意外性だけが最後まで脚本全体を支配しており、それ以上のどんでん返しがなく、序盤から最終盤まで、その展開は初期設定から容易に推測できてしまうものです。
トゥルーマンが世界の真実に気づき、脱出を試みるという映画。
簡単に言ってしまえばそれ以上の要素がなく、設定の勝利と言えば聞こえはいいかもしれませんが、脚本的には初期設定以上の強みがない単調な作品だともいえます。
もちろん、展開が単調であることは上述した葛藤の演出や脱出時のアドベンチャー的側面で十分カバーされてはいるのですが、展開に深みがあってなおかつ演出も良い、というレベルに達しないと名作・傑作とは評価し難いでしょう。
そんなわけで、本作の評価は3点(佳作・平均以上の作品)とします。
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