【政治学】おすすめ政治学本(その他)ランキングベスト4【オールタイムベスト】
2020-01
【数学ガール】数学要素も恋愛要素も中途半端な失敗作 評価:1点【原作:結城浩 作画:日坂水柯】
数学をテーマにした小説「数学ガール」の漫画版。原作者はプログラミングの実用書で有名な結城浩さん、作画は後に「白衣のカノジョ」を手がけることになる日坂水柯さんとなっております。原作の購入も検討したのですが、「数学の面白さを伝える」がメインで文芸的な特徴が薄いのであれば漫画版でも同じだろうと考え、漫画版を購入いたしました。しかし、これが大失敗。(もしかすると原作もこうなのかもしれませんが)数学については理数系に詳しくない人間を楽しませようという意図が一切ないような説明しかされないうえ、恋愛を軸とした物語にも数学が深く関わるわけではなく、かといってラブストーリーは非常に陳腐。一般向け数学本としても漫画としても平凡の水準にさえ達していない作品でした。あらすじ高校生の「僕」は数学好きで、中学時代は放課後にひとりで数式を展開するほどだった。そんな「僕」にも、高校では数学仲間ができた。同学年のミルカさんと後輩のテトラちゃん。ミルカさんは「僕」よりも数学に長けており、いつも「僕」に問題を出す側。逆に、テトラちゃんは「僕」に数学を教わっている。「僕」はミルカさんと、あるいはテトラちゃんと、今日も放課後の...
「リサイクルと世界経済」小島道一 評価:2点|国際貿易の中におけるリサイクルの立ち位置【経済学】
リサイクルという言葉が人口に膾炙するようになってからずいぶん経ちましたが、資源の制約や環境問題がクローズアップされる中で、その概念は今日においてますます輝きを増しているように感じられます。そして、より一体化する世界経済の中で、リサイクルという行為もずいぶん前から国際貿易の中で行われるようになっております。日本の中古自動車や中古家電が発展途上国で利用されているのは有名な話ですし、紙やプラスチックの再生工場も多くは発展途上国に立地しています。先進国から廃棄物を輸入し、原料として使用可能な状態にしてから再び先進国に輸出するというサイクルはもはや当たり前のこととなっているのです。そのような、国際貿易の中でのリサイクル過程がどのように変化し、どのような問題を孕んでいて、どのように解決しているのかということが本書には記されています。著者はジェトロ・アジア経済研究所の小島道一氏。肩書は研究者ですが、本書の筆致には実務担当者として国際貿易の規制や促進に携わってきた側面が色濃く現れております。目次第1章 国境を越えてリユースされる中古品第2章 国境を越えてリサイクルされる再生資源第3章 中古品や再生資源...
小説 「アルケミスト」 パウロ・コエーリョ 星2つ
1. アルケミストブラジル出身の作家、パウロ・コエーリョの代表作で、累計発行部数が1億部を超えるという世界的な大ベストセラーです。原著は1993年発行で、日本語版は1997年の発行。当時、書店で大プッシュされていたことを記憶している人もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな偉大な作品に対してやや傲慢な態度になってしまうかもしれませんが、個人的には凡作であると感じました。抽象的で浮ついた言葉がそれっぽい雰囲気を醸し出しているだけで心を動かすような本当の内容というものが存在せず、物語そのものはいたって普通。読んで不快になることはありませんが、読破した直後の気分としては「ふーん」で終わってしまった作品です。2. あらすじスペインのアンダルシア地方を拠点に活動する羊飼いの少年サンチャゴはある日、セイラムの王様メルキゼデックだと名乗る老人と出会う。王様は少年が飼っている羊の十分の一を対価に、宝物が眠る場所を教えてくれるという。悩んだ末、少年が羊を連れて王様のもとへ再びやって来ると、宝物はエジプトのピラミッドにあるのだと王様は言い、少年にウリムとトムミムという二つの石を渡すのだった。ピラミッドへ...
映画 「ティファニーで朝食を」 監督:ブレイク・エドワーズ 星2つ
1. ティファニーで朝食をオードリー・ヘップバーン主演の有名な古典映画で、1961年に公開されています。監督のブレイク・エドワーズは映画「ピンク・パンサー」シリーズを手がけた人物。原作小説の著者であるトルーマン・カポーティは村上春樹が影響を受けた作家として知られています。内容は王道のロマンティックラブストーリーですが、個人的にはそのカテゴリにおける凡作以上の作品にはなっていないと感じました。 1961年という時代を考えれば、 田舎出身の美人娼婦と無名作家の都会的で悪戯な恋愛模様という物語はもしかすると当時画期的で、「都会のはぐれもの同士の恋愛」という枠組みをつくったのかもしれません。しかし、さすがに展開が一本調子すぎて退屈な部分がありますし、かっこよさの演出もベタすぎて(もちろん、この古典こそがベタさ(=現在のスタンダード)の先駆者だったのかもしれませんが)今日の視聴においてとりわけ良いと感じることはできないでしょう。2. あらすじホリー・ゴライトリーはニューヨークのアパートに住み、娼婦として生計を立てていた。しかし、いくら稼いでも浪費ばかりで少しもお金は貯まらず、大金持ちとの結婚で玉...
漫画 「ピンポン」 松本大洋 星2つ
1. ピンポン1996年から1997年までビッグコミックスピリッツで連載された卓球漫画です。長年にわたり根強い人気を誇る作品で、メディアミックスでは2002年に実写映画化、2014年にアニメ化、書籍としても2002年に新装版が発売、2012年に文庫版が発売、そして2014年にアニメ化記念の大判が発売されるなど、近年においてもその勢いは衰えておりません。著者の松本大洋さんも漫画好きのあいだでは知られた存在で、本作のほかに「鉄コン筋クリート」が代表作として挙げられることが多いです。そんな作品なのですが、個人的には巷の高評価ほどの作品には感じられませんでした。確かに、独特な絵のタッチが醸し出す迫力のある試合風景は良いと感じましたが、なんといっても物語がいまいちなうえ、極端すぎるキャラクター造形がせっかくのリアリティ的良さを削いでいます。2. あらすじ主人公は"スマイル"こと月本誠(つきもと まこと)と"ペコ"こと星野裕(ほしの ゆたか)。二人は幼馴染であり、県立片瀬高校の1年生として同じ卓球部に所属している。しかし、練習嫌いのペコは部活をサボって遊んでいることが多く、スマイルも持ち前の無気力...
新書 「江戸東京の明治維新」 横山百合子 星2つ
1. 江戸東京の明治維新帯の煽り文は「150年前の胸に刺さる現実」。明治維新といえば通常、政府高官として新しい日本をつくりあげていく明治の元勲たちに焦点が当たるか、もしくは、幕府側の将軍とその側近であったり、最後まで佐幕派として戦った武士たちに焦点が当たるかの2択になってしまいがちなところ、本書は旧江戸・新東京に生きた庶民たちの生活について説明しようとしているという点で差異化が図られております。著者は国立歴史民俗博物館教授の横山百合子さん。東大の学部を卒業後、社会科教員として勤めた後に博士課程を経て大学教員としてのキャリアを歩み始めたという人物です。本筋からは逸れますが、リカレント教育の重要性が盛んに言及される中で、今後、日本でもこのような経歴を持つ人が増えるといいな感じます。そして肝心の中身ですが、題材は新鮮だけれどもやや散漫というイメージ。庶民の生活変化の全体像をとらえるというよりは事例集という形式になっており、下級武士の誰それはこう生きた、遊女の誰それはこう生きた、賤民の誰それはこう生きたというような記述が続きます。その生き様の書かれ方は具体的で面白いのですが、それこそ下級武士・...