2019-04

経済・金融・経営・会計・統計

教養書 「制度・制度変化・経済成果」 ダグラス・C・ノース 星3つ

1. 制度・制度変化・経済成果 1993年のノーベル経済学賞受賞者、ダグラス・C・ノースの著書で、原著は1990年刊行ですから当時の業績を纏めた内容となっております。難解な言い回しも目立ちますが(堅い訳だからかもしれませんが)、「制度」を軸に新古典派経済学に対して大きな影響を与えた現代の古典として面白く読むことができます。 2. 目次 第Ⅰ部 制度第Ⅱ部 制度変化第Ⅲ部 経済成果 3. 感想 本書全体が問いかけることとしてまず出てくるのが、当時隆盛を誇っていた新古典派経済学(の競争と淘汰を強調する部分)に対し、「それではなぜ、『既に競争は終わっていないのか』」という語りかけです。身の回りを見たり、あるいは様々な国の経済体制を知識として学んでみたりすると、決して効率的な制度ばかりがあるわけではなく、むしろ、非効率的な制度が多く残存しているという印象を抱くことが多いのではないでしょうか。 なぜ、競争圧力は非効率的な制度の除去を導かないのか、導くとしても、なぜ素早くないのか。なぜ僅かな経済停滞国しか経済発展国のモデルを見習おうとしないのか。 ...
響け!ユーフォニアム

アニメ映画 「響け! ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」 監督: 石原立也 星3つ(後編)

1. 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~ (後編) 「響け! ユーフォニアム」のアニメシリーズで第3期に相当するアニメ映画になります。本記事はレビューの後編で、前編はこちらです。 充実していた序盤~中盤に比べ、あまりにも駆け足感が強かった終盤の展開。やや残念だったことは否めません。原作小説2冊分を1本の映画にしている弊害なのかもしれませんが、(リズと青い鳥を別立てで製作しているとはいえ)こちらも前後編でやってほしかったなぁと感じてしまいます。特段「悪い」シーンはないのですが、課題もトラブルもなく進行する映像には退屈さがありました。 2. あらすじ 1年生がもたらした波乱も見事解決し、先輩としての主導力を見せた黄前久美子(おうまえ くみこ)。京都府大会も無事突破し、合宿など部活の練習に打ち込むのはもちろんのこと、あがた祭りでの塚本修一(つかもと しゅういち)や高坂麗奈(こうさか れいな)との交流、父親に問いかけられて将来のことに思い悩むなど、部活以外でも様々な経験や葛藤を積み重ねていく。 そして迎えた関西大会、OBOG達が見守る...
響け!ユーフォニアム

アニメ映画 「響け! ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」 監督: 石原立也 星3つ(前編)

1. 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~ (前編) 同名の小説を原作とするアニメシリーズの第3期に相当する部分ですが、TVシリーズとしてではなくアニメ映画として公開されました。原作の著者は武田綾乃さん、アニメ版は京都アニメーションが手掛けています。原作はともかくアニメ版は私もファンでありまして、本ブログでも継続して取り上げている作品の一つです。アニメ版の第1期、第2期のレビュー及び原作小説のレビューは以下の通りです。 序盤~中盤にかけての部活人間関係&スポ根の在り方という本作の原点にまつわる展開の良さに敬意を表しつつも、2冊分の小説を1つの映画に纏めているからか、終盤を中心に粗雑さや異様な駆け足感もあってやや「濃密さ」の不足を感じ、星3つとしました。お勧めできる作品ではあります。 2. あらすじ 悲願の全国大会出場を果たした北宇治高校吹奏楽部だったが、全国大会での評価は最低ランクである銅賞。悔しさを噛みしめながらもさらなる躍進を胸に秘める部員たち。しかし、3年生が引退したいま、目下の課題は部員集めだっ...
壷井栄

小説 「二十四の瞳」 壷井栄 星2つ

1. 二十四の瞳 戦前から戦後すぐにかけて活躍した作家、壷井栄さんの代表作。1954年に映画化され、そこから人気に火が付いた作品です。舞台となった小豆島にはいまでも「二十四の瞳 映画村」が存在し、当時の流行ぶりが伺えます。 感想としては「やや薄い」と思ってしまったのが正直なところ。壷井さんが持つ切実な反戦への想いや、心温かな子供たちとの交流とその後の悲劇など、描きたいことは分かるのですが、小説の物語として読むにはあまりにエピソードが淡白な割に主張だけが延々と続く部分が長すぎる印象でした。 2. あらすじ 舞台は戦前の小豆島。治安維持法が制定され、世の中が窮屈になっていく中、主人公である大石先生は分校の小学校に新任教師として赴任することになった。五年生以上は本校に通うため、分校に通っているのは四年生以下の小さな子供ばかり。その中でも、大石先生が担当することになったのは入学したばかりの一年生十二人だった。 子供たちとは次第に打ち解け合っていくものの、洋服を着て自転車で分校に通う大石先生の姿に田舎の村人たちは反感を覚え、嫌味を言う者も多い。それでもへこ...
☆☆☆(漫画)

漫画 「1518! イチゴーイチハチ!」 第7巻 相田裕 星3つ

1. 1518! イチゴーイチハチ! 第7巻 いやはや愕然といたしました。第6巻の感想を辛めに書いたとはいえ、1巻ごとに感想記事を上げるくらいに思い入れのあった本作。驚くべきことに、この第7巻が最終巻となってしまいました。作者あとがきにも無念の思いが滲み出ている通り打ち切り感も漂っているのですが、この名作が打ち切られる(くらいの売り上げ)など信じられません。 第1巻と前巻である第6巻の感想は上の通りです。特に第1巻~第3巻の出来栄えは漫画史に残るといってもよいくらいなので是非読んで頂きたいところ。 さて、本題となる第7巻の感想に入りますと、前半の生徒会役員選挙の話は悪くないのですが、もう少し話を膨らませて盛り上げられたのではないかと感じました。後半は完結に向けての舵取りですね。野球を再開するために髪を切った会長の姿にはぐっとくるものがある一方、世代交代の話はやや唐突感と駆け足感があり、無理やり完結させたのだなぁという印象でした。 2. あらすじ 冬休み明け、晴れて恋人となった幸と烏谷を待ち受けていたのは生徒会役員選挙。非常...
政治制度・統治機構

新書 「世論」 W・リップマン 星2つ 下巻

1. 世論(下巻) アメリカの伝説的ジャーナリスト、ウォルター・リップマンがマスメディア時代の「世論」について記した評論エッセイ。上巻に続いて下巻の紹介です。上巻の記事はこちら。 2. 目次 第5部 共通意志の形成第6部 民主主義のイメージ第7部 新聞第8部 情報の組織化 3. 感想 下巻でリップマンが強調するのは、人々が関心を寄せ、物事を具体的に理解できる範囲の小ささと民主制の理想とのギャップです。 上巻の記事でも述べた通り、人々の思考能力は身近な問題でしかそれを完全に発揮することはできません。村人全員が村のことをよく知っているような状態では確かに、村人たちは村のことについて具体的に考え、物事を決めることができるかもしれません。そして、それこそが当初、民主制の理想を思い描いた人々の頭にあった政治の姿だとリップマンは述べます。 しかし、国全体のレベル、あるいは外交を含めた世界全体のレベルとなると、マスメディアからもたらされる断片的な情報に自らの経験から成るステレオタイプを重ね合わせ、偏った想像力から状況を理解することしかで...
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