映像作品

戦場のメリークリスマス

【戦場と友情】映画 「戦場のメリークリスマス」 監督:大島渚 星4つ

1. 戦場のメリークリスマス 第2次世界大戦下の日本軍俘虜収容所を舞台に、日本軍の士官・下士官と俘虜となっている英軍士官との奇妙な友情を描いた作品。 1983年公開で、カンヌ国際映画祭のパルム・ドール最有力という下馬評ながら受賞を逃してしまったエピソードでも有名です。 それでも、海外では英国アカデミー賞の作曲賞を受賞。 国内でも毎日映画コンクールや日本アカデミー賞といった賞を獲得しており、いまなお名作日本映画として記憶されている作品の一つです。 戦時下の太平洋という舞台の特殊性から日英豪NZ合作となっていることもさることながら、本作の特徴といえばまずもってその特殊なキャスティングにあるでしょう。 主演格の4人のうち3人が本職の役者ではないのです。 その3人というのが、当時ミュージシャンとして有名だったデヴィッド・ボウイ、イエローマジックオーケストラというバンドのメンバーとして活躍していた坂本龍一、ツービートという漫才コンビの片割れとして活躍していたビートたけし。 その名前を見るだけでも極めて異色の配役であることが理解できます。 他...
☆☆☆(漫画)

漫画&アニメ映画 「この世界の片隅に」 著者:こうの史代 監督:片渕須直 星3つ

1. この世界の片隅に 2019年1月現在において「この世界の片隅に」といえばアニメ映画を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。事務所との係争により「のん」への改名を余儀なくされ、仕事が激減していた能年玲奈さんを主演声優に迎えてたった63館での公演と、マイナー映画的な興行から始まったにも関わらず口コミによって人気が広まった本作。最終的には30億円近い興行収入を獲得し、世界60ヶ国以上で公開されるようになるなどまさに日本映画界のシンデレラといってもよい作品でしょう。2019年12月20日には新カットを加えた「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」として改めて公開される予定で、その勢いは留まるところを知りません。 本作が公開された2016年は本作のほかにも「君の名は。」「聲の形」といったアニメ映画界の転換点となる作品が公開された年であり、いまや日本の映画シーンを牽引している「子供向けでもオタク向けでもないアニメ映画」というジャンルの礎を築いた作品でもあります。「君の名は。」「聲の形」は本ブログでも既にレビュー済み。これでようやく三作品コンプリートとなりました。 ...
茄子 スーツケースの渡り鳥

アニメ映画 「茄子 スーツケースの渡り鳥」 監督:高坂希太郎 星2つ

1. 茄子 スーツケースの渡り鳥 自転車競技を題材とした2007年公開のアニメーション映画で、以前に本ブログでも紹介した「茄子 アンダルシアの夏」の続編となっております。監督は前作と同じく高坂希太郎さん。スタジオジブリのスタッフとして数々の有名作品に参加されております。「茄子 アンダルシアの夏」の感想はこちら。 舞台をスペインのアンダルシアから日本へと変えた本作ですが、様々な意味で前作よりしぼんでしまった印象です。手軽に見られる娯楽作品ではありますが、インスタントな楽しみの後に残る感慨は少なく、あまりにも「重み」に欠けていると感じました。 2. あらすじ グランツール(三大大会)の一つであるブエルタ・ア・エスパーニャを制したペペ・ベネンヘリはチーム「パオパオビール」の一員として戦歴を重ね、ブエルタ・ア・エスパーニャ以降優勝こそないものの各大会で上位に入ることで順調にポイントを獲得していた。 そんなペペたち「パオパオビール」が次なる参加大会として選んだのが、栃木県で開催されるジャパンカップ。スーツケースを手に飛行機で日本へと渡った一行だ...
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☆☆☆(映像作品)

アニメ映画 「天気の子」 監督: 新海誠 星3つ

1. 天気の子 「君の名は。」で記録的な大ヒットを獲得し、アニメーション映画監督としての名声を一気に高めた新海誠監督3年ぶりの新作。今月(2019年7月)に封切られたばかりの作品ですが、既に「君の名は。」を超える速度で興行収入を伸ばしているという情報まであるほどで、映画ファンの新海誠監督に対する期待の高さが伺えるところです。凡庸な少年と天気を自在に操ることのできる少女のボーイ・ミーツ・ガール物語という触れ込みでしたが、公開初日に大雨からの晴れという天気が実際に起こったりと、まさに日本の現在の(異常)気象とマッチした点でも天命に恵まれた作品になっております。 当ブログでも「君の名は。」については2回ほど記事にしており、もちろん、本作「天気の子」についても公開を楽しみにしておりました。 また、同監督の作品では2013年公開の「言の葉の庭」も記事にしています。 そんな「天気の子」ですが、感想としてはストーリーが中の上、キャラクターは中の中から中の下といったところでしょうか。ただ、演出やテンポといった面では優れていたほか、要素要素を...
きみと、波にのれたら

アニメ映画 「きみと、波にのれたら」 監督: 湯浅政明 星2つ

1. きみと、波にのれたら 今月(2019年6月)公開されたばかりのアニメ映画で、監督は湯浅政明。初期の「クレヨンしんちゃん」や「ちびまる子ちゃん」における特徴的な作画で知られ、近年はアニメ映画の監督として精力的に作品を発表しています。当ブログでも「夜は短し歩けよ乙女」と「夜明け告げるルーの歌」の記事を書いています。 ヒーロー及びヒロインの声優にGENERATIONS from EXILE TRIBEの片寄涼太と元AKB48の川栄李奈を起用し、湯浅監督としては珍しいストレートな恋愛ものという触れ込みだった本作。ストーリーは凡庸で、台詞回しとファンタジー設定はちょっと無茶という印象を受けました。 2. あらすじ 大学入学を機に引っ越した向水ひな子(むかいみず ひなこ)。サーフィンが大好きで、マンションも海の見える場所を選んでいた。しかし、引っ越し早々、マンションは火事に遭ってしまう。 迫る火の手から命からがら屋上へと向かったひな子を救ったのが消防士の雛罌粟港(ひなげし みなと)。惹かれ合い、恋人なった二人だが、ある日、港は海...
☆☆☆☆(映像作品)

アニメ映画 「アナと雪の女王」 監督: クリス・バック 星4つ

1. アナと雪の女王 2013年に公開されたディズニー映画で、世界中で大ヒットした超有名作です。日本でも興行収入歴代3位となる255億円を記録しており、2019年現在でさえ本映画の名前も知らないという人の方が少ないでしょう。 松たか子さんが歌った劇中歌の"Let it go"(の日本語訳版)もブームになりました。 私は今更ながら初視聴してみたのですが、やはり評判に違わずいい映画だったというのが正直な感想。シンプルに「愛」や「勇気」についての物語として観ても面白いですし、これまでのディズニー、あるいは旧い社会の固定観念を振り払うためのメタ社会的な物語としても深みがあります。表面をさらっても楽しむことができ、それでいて真理や深遠さも備えている。そんな作品の一つです。 2. あらすじ 舞台はアレンデール王国、主人公は二人の王女アナとエルサ。姉であるエルサは幼少の頃から氷の魔法に長け、その魔法を使ってアナと一緒に遊ぶことも多かった。しかしある日、エルサは誤って氷の魔法をアナに命中させてしまい、アナは意識不明の重体となってしまう。 二人の両親はトロールに助...
響け!ユーフォニアム

アニメ映画 「響け! ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」 監督: 石原立也 星3つ(後編)

1. 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~ (後編) 「響け! ユーフォニアム」のアニメシリーズで第3期に相当するアニメ映画になります。本記事はレビューの後編で、前編はこちらです。 充実していた序盤~中盤に比べ、あまりにも駆け足感が強かった終盤の展開。やや残念だったことは否めません。原作小説2冊分を1本の映画にしている弊害なのかもしれませんが、(リズと青い鳥を別立てで製作しているとはいえ)こちらも前後編でやってほしかったなぁと感じてしまいます。特段「悪い」シーンはないのですが、課題もトラブルもなく進行する映像には退屈さがありました。 2. あらすじ 1年生がもたらした波乱も見事解決し、先輩としての主導力を見せた黄前久美子(おうまえ くみこ)。京都府大会も無事突破し、合宿など部活の練習に打ち込むのはもちろんのこと、あがた祭りでの塚本修一(つかもと しゅういち)や高坂麗奈(こうさか れいな)との交流、父親に問いかけられて将来のことに思い悩むなど、部活以外でも様々な経験や葛藤を積み重ねていく。 そして迎えた関西大会、OBOG達が見守る...
響け!ユーフォニアム

アニメ映画 「響け! ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」 監督: 石原立也 星3つ(前編)

1. 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~ (前編) 同名の小説を原作とするアニメシリーズの第3期に相当する部分ですが、TVシリーズとしてではなくアニメ映画として公開されました。原作の著者は武田綾乃さん、アニメ版は京都アニメーションが手掛けています。原作はともかくアニメ版は私もファンでありまして、本ブログでも継続して取り上げている作品の一つです。アニメ版の第1期、第2期のレビュー及び原作小説のレビューは以下の通りです。 序盤~中盤にかけての部活人間関係&スポ根の在り方という本作の原点にまつわる展開の良さに敬意を表しつつも、2冊分の小説を1つの映画に纏めているからか、終盤を中心に粗雑さや異様な駆け足感もあってやや「濃密さ」の不足を感じ、星3つとしました。お勧めできる作品ではあります。 2. あらすじ 悲願の全国大会出場を果たした北宇治高校吹奏楽部だったが、全国大会での評価は最低ランクである銅賞。悔しさを噛みしめながらもさらなる躍進を胸に秘める部員たち。しかし、3年生が引退したいま、目下の課題は部員集めだっ...
☆☆☆(映像作品)

アニメ映画 「言の葉の庭」 監督:新海誠 星3つ

1. 言の葉の庭 2013年公開のアニメ映画。「君の名は。」で一躍有名となった新海監督の作品で、「君の名は。」の一つ前の作品にあたります。「君の名は。」は本ブログでも一度星2つで評価した後、考えを改めて評価を上げています。 新海監督特有の映像美の素晴らしさはもちろんのこと、「人生に迷う高校生」と「精神的に追い込まれている社会人」の交流というテーマで(ファンタジー色なく)アニメ映画を描こうとしたのも斬新で評価できます。物語面でやや瑕疵を感じましたが、それでも鑑賞後は胸のすくような気分にさせてくれました。 2. あらすじ 高校生の孝雄は靴職人という一風変わった将来の夢を持っており、現実味のない夢に没頭してしまう自分に思い悩んでいた。そんな孝雄は、雨の日の午前だけは学校をサボってよいという自分ルールを作って新宿御苑のベンチに足を運び一人で靴のデザインを考えるのだった。 ある雨の朝、いつものように孝雄が新宿御苑に行くと、そこには先客がいた。その若い女性はチョコレートをつまみにビールを飲み、スーツを着ていながら「会社をサボっちゃった...
ルパン3世 カリオストロの城

アニメ映画 「ルパン3世 カリオストロの城」 監督:宮崎駿 星3つ

1. ルパン三世 カリオストロの城 いまでも根強い人気を誇る漫画/TVアニメシリーズ「ルパン3世」のアニメ映画第2作ですが、それ以上に宮崎駿の初監督作品として有名でしょう。 「ジブリ」の原点の一つであるといっても過言ではありません。 1979年の映画でありながらこれまで16回もTV放送されており、直近は2018年というところも宮崎監督の地力を感じさせます。 感想としても「ジブリ」だなぁという印象を受けました。物理法則を無視した充実のアクションと凝ったダンジョンを攻略していく冒険要素。ストーリーの整合性や場面場面の説得力よりも演出と雰囲気で「観させる」映画でしたね。 2. あらすじ いつものようにカジノの金庫から大金を盗み出したルパンと次元。しかし、よく見るとその札束は「ゴート札」と呼ばれる偽札だった。ゴート札とは極めて精巧であることで有名な偽札で、今回もルパンだからこそ気づけたものの、一般的にはその真贋を見極めるのは非常に困難である。 大量のゴート札の出現を怪しんだルパンと次元は一路、ゴート札と関係が深いという噂のあるヨーロッパの小国「カリオスト...
つみきのいえ

アニメ映画 「つみきのいえ」 監督:加藤久仁生 星3つ

1. つみきのいえ 2008年にアカデミー賞の短編アニメーション部門を受賞した作品です。日本の作品では現在のところ最初で最後の受賞作となっており、当時はマスコミ等でも多く取り上げられていた印象ですが、やはり芸術的な短編アニメーションは大衆作品となり得ないのか、近年脚光を浴びているかと言われれば否というのが答えになってしまうでしょう。 全体的な特徴としては、絵本のような作品で、かつて「みんなのうた」でよく見た画風に近い印象です。たった12分の作品ですが、無音のうちに展開されるストーリーから感じられるノスタルジーと生きることへの強い信念が際立ちます。ただ、いわゆる構成やキャラクターに趣向が凝らされたエンタメ的盛り上がりや、人生観をがつんと叩いてくるような威力はないというところは弱点です。12分の作品では仕方がないのかもしれませんが、この技法・作風では星3つが天井だとも感じました。 2. あらすじ 海面の上昇著しく、多くの人が去ってしまった街。おじいさんは積み木のように上へ上へと家屋を増築しながらこの街に踏みとどまっている。そんなおじいさんはある日、お気に入...
☆☆(映像作品)

アニメ 「プラネテス」 監督:谷口悟朗 星2つ

1. プラネテス 幸村誠さん原作の漫画をサンライズがアニメ化した作品。サンライズといえば「ガンダム」シリーズが有名ですが、同じ宇宙を舞台にしていても激しいロボットバトルではなく、リアル志向のお仕事アニメになっています。幸村さんは現在連載中の「ヴィンランド・サガ」で有名ですが、その硬派な作風はこの「プラネテス」にも表れています。監督の谷口悟朗さんは「コードギアス 反逆のルルーシュ」が代表作として知られているのではないでしょうか。コードギアスのようなぶっ飛びエンターテイメントから本作のような堅いヒューマンドラマまで作風の広さが伺えます。 感想としては、なにもかも「普通」で、捻りがなさすぎるのではないかと思いました。2003~2004年にかけて放送された作品なので、当時としても凡庸だったのではないかと感じます。「ハルヒ」以前ではありますが、「エヴァ」以降ではあり、ただ分かりやすいだけのストーリーが受け入れられる環境は過去のものになっていたはずです。人が抱える割り切れなさ、単純ではない社会を、それに相応しい手法で描かなければならない、という前提に立つ段階まで日本アニメの脚...
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