☆☆(新書・教養書)

☆☆(新書・教養書)

新書 「老いた家、衰えぬ街」 野澤千絵 星2つ

1. 老いた家、衰えぬ街 明治大学政治経済学部の教授で、都市計画やまちづくりを専門とする野澤千絵氏の著作です。 近年は報道番組等でも取り上げられることも多い「空き家」の問題について、その現実的な弊害と解決の難しさ、講じられている方策、そして、一人一人が住まいの「終活」をする重要さが説かれています。 各論的な項目が多く、包括的な枠組みに欠ける点がやや難だとは思いましたが、空き家が解消されない要因と、関係ないと思っていても思わぬきっかけから当事者になってしまう可能性についての言及、そして、日本や世界で行われている様々な解決策についての紹介など、この分野における多様な知識を得るのにはそれなりに有用な新書でした。 2. 目次 第1章 国民病としての「問題先送り」症候群第2章 他人事では済まされない相続放棄第3章 世界でも見られる人口減少という病第4章 空き家を救う支援の現場から第5章 さあ「住まいの終活」を始めよう 3. 感想 住宅政策は本ブログが継続的に関心を持っている分野であり、これまでも、「住宅政策のどこが問題か」や「新築がお好きですか...
☆☆(新書・教養書)

教養書 「拝啓、本が売ません」 額賀澪 星2つ

1. 拝啓、本が売れません タイトルからは内容が判りづらい本なのですが、出版不況に直面しなかなか部数の伸びない作家が編集者と一緒に「本を売る」ことが得意な人々にインタビューをして回るというもの。そのインタビュー記録とそこから著者が得た気づきが載っている、いわばインタビュー集&著者エッセイのような本です。 そんな本を書く著者のプロフィールなのですが、こんな人が「本が売れない」ことに悩むなんてという経歴を持つ作家さんです。私立の中高一貫校から日芸(日本大学芸術学部)の文芸学科に進学。卒業後の就職先は広告代理店で、在職中に若くして松本清張賞と小学館文庫小説賞という二つの新人賞を別々の作品で受賞してデビュー。翌年発売した「タスキメシ」は高校の課題図書に選ばれるという、まさに文芸の王道を進んできた人物。高校在学中にも全国高等学校文芸コンクール小説部門で優秀賞を受賞しているなど、まさに「野良育ちとは違う」感のある小説家だといえるでしょう。 しかし、こんな黄金ルートを歩んできた作家でも「拝啓、本が売れません」を書かなければならないほどの窮地にあることは本書の序盤で明らかに...
経済・金融・経営・会計・統計

新書 「リサイクルと世界経済」 小島道一 星2つ

1. リサイクルと世界経済 リサイクルという言葉が人口に膾炙するようになってからずいぶん経ちましたが、資源の制約や環境問題がクローズアップされる中で、その概念は今日においてますます輝きを増しているように感じられます。 そして、より一体化する世界経済の中で、リサイクルという行為もずいぶん前から国際貿易の中で行われるようになっております。日本の中古自動車や中古家電が発展途上国でよく利用されているのは有名な話ですし、紙やプラスチックの再生工場も多くは発展途上国に立地し、先進国から廃棄物を輸入し、原料として使用可能な状態にしてから再び先進国に輸出するというサイクルはもはや当たり前のこととなっているのです。 そのような、国際貿易の中でのリサイクル過程がどのように変化し、どのような問題を孕んでいて、どのように解決しているのかということが本書には記されています。著者はジェトロ・アジア経済研究所の小島道一氏。肩書は研究者ですが、本書の筆致には実務担当者として国際貿易の規制や促進に携わってきた側面が色濃く現れております。 2. 目次 第1章 国境を越えてリユースさ...
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☆☆(新書・教養書)

新書 「江戸東京の明治維新」 横山百合子 星2つ

1. 江戸東京の明治維新 帯の煽り文は「150年前の胸に刺さる現実」。明治維新といえば通常、政府高官として新しい日本をつくりあげていく明治の元勲たちに焦点が当たるか、もしくは、幕府側の将軍とその側近であったり、最後まで佐幕派として戦った武士たちに焦点が当たるかの2択になってしまいがちなところ、本書は旧江戸・新東京に生きた庶民たちの生活について説明しようとしているという点で差異化が図られております。 著者は国立歴史民俗博物館教授の横山百合子さん。東大の学部を卒業後、社会科教員として勤めた後に博士課程を経て大学教員としてのキャリアを歩み始めたという人物です。本筋からは逸れますが、リカレント教育の重要性が盛んに言及される中で、今後、日本でもこのような経歴を持つ人が増えるといいな感じます。 そして肝心の中身ですが、題材は新鮮だけれどもやや散漫というイメージ。庶民の生活変化の全体像をとらえるというよりは事例集という形式になっており、下級武士の誰それはこう生きた、遊女の誰それはこう生きた、賤民の誰それはこう生きたというような記述が続きます。その生き様の書かれ方は具体的で面白いの...
経済・金融・経営・会計・統計

教養書 「ゲーム理論はアート」 松島斉 星2つ

1. ゲーム理論はアート 松島斉東京大学教授によるゲーム理論の紹介本です。体系的な教科書や専門書ではなく、かといってエッセイ的な本や時事問題解説本でもないため「紹介本」としておくのが適切でしょう。近年、社会科学の分野で一大巨頭となりつつあるゲーム理論の考え方が現実とどう関連しているのか、また、ゲーム理論の考え方を現実の状況改善にどう適用しうるのかが事例検討を中心に説明されております。 全体的な印象としては、とても中途半端な本に思われました。ゲーム理論に馴染みのない人にわかりやすく書いていますといった論調にも関わらず碌な説明もなしに専門用語やアカデミックな言い回しが多用され、事例も社会科学に興味のある人しか関心を抱かないだろうというものばかり。かといって体系性や網羅性、専門的な深みがあるかといえばそうではないという本に仕上がっており、ところどころ面白い部分はあったものの、惹きこまれるというよりは購入した義務感で読み進めてしまった本になりました。 2. 目次 第1部 アートとしてのゲーム理論第1章 ゲーム理論はアートである第2章 キュレーションのすすめ第...
経済・金融・経営・会計・統計

新書 「平成の通信簿」 吉野太喜 星2つ その4

1. 平成の通信簿 その4 「語り」ではなくデータをもとに平成時代を振り返り、日本を取り巻く事情につき数値でその変遷を示そうという本書。本記事はその感想の「その4」になります。「その3」はこちら。 「その4」で取り上げるのは第4章、「身体・健康から見る30年」。高齢化、医療費、体格及び身体能力、そして死に方といった、成熟社会・高齢化社会で課題となっている諸事項が取り上げられています。 2. 目次 1. 世界の中の日本2. 経済・労働からみる30年3. 家計・暮らしから見る30年4. 身体・健康から見る30年 3. 感想:身体・健康からみる30年 第4章で紹介されるデータのうち、今回取り上げるのは「24. 高齢化」「25. 医療費」「26 身体」「27. 死」になります。 逼迫している一方で繊細な問題のため、普段は目をつぶりがちな日本の課題。それがデータとして赤裸々に表れている章になっています。 「24. 高齢化」と「25. 医療費」では、平成年間における寿命と高齢化率の伸長度合い、そして増え続ける医療費...
経済・金融・経営・会計・統計

新書 「平成の通信簿」 吉野太喜 星2つ その3

1. 平成の通信簿 その3 「語り」ではなくデータをもとに平成時代を振り返り、日本を取り巻く事情につき数値でその変遷を示そうという本書。本記事はその感想の「その3」になります。「その2」はこちら。 「その3」で取り上げるのは第3章、「家計・暮らしから見る30年」。消費、教育、観光といったお金の使い方や、会議の長さ、メディアの視聴時間といった時間の使い方、そして貧困という家計の苦難が取り上げられています。 2. 目次 1. 世界の中の日本2. 経済・労働からみる30年3. 家計・暮らしから見る30年4. 身体・健康から見る30年 3. 感想:家計・暮らしからみる30年 第3章で紹介されるデータのうち、今回取り上げるのは「18. 教育」「21. 先進国の貧困」「23 メディア」になります。 また、「17 消費」にも必要に応じて言及いたします。 「家計・暮らしから見る30年 」というタイトルの通り、私たちの幸福に直結し、最も身近に感じる分野の統計ですから、示されるデータの生々しさが目立ちます。1日1日の変化をあまり感じない部分...
経済・金融・経営・会計・統計

新書 「平成の通信簿」 吉野太喜 星2つ その2

1. 平成の通信簿 その2 「語り」ではなくデータをもとに平成時代を振り返り、日本を取り巻く事情につき数値でその変遷を示そうという本書。本記事はその感想の「その2」になります。「その1」はこちら。 「その2」で取り上げるのは第2章、「経済・労働から見る30年」。国際収支の推移や様々な産業の興亡、近年注目の労働生産性などが取り上げられています。 2. 目次 1. 世界の中の日本2. 経済・労働からみる30年3. 家計・暮らしから見る30年4. 身体・健康から見る30年 3. 感想:経済・労働からみる30年 第2章で紹介されるデータのうち、今回取り上げるのは「10. 国際収支」「12 農業」「13 漁業」になります。 世の中には製造業のパフォーマンスだけを見て日本の「国力」を測ろうとする風潮がまだ根強く存在し、日常のニュースやインターネットの論調なんかも製造業中心の説明になりがちですが、それだけに、製造業以外に焦点を当てたこれらのデータからは平成日本を振り返るための興味深い示唆が得られます。 「10. 国際収支」 では、貿易...
経済・金融・経営・会計・統計

新書 「平成の通信簿」 吉野太喜 星2つ その1

1. 平成の通信簿 その1 元号が平成から令和に変わり、様々な「平成総括本」は出版されている今日。本書もそのバリエーションの一つですが、「識者が平成を語る」という形式ではなく、様々なデータをもとに平成という時代において日本がどう変化したのかを数値で見ようという変わり種。最近のベストセラーの一つである「FACTFULNESS」を意識していると著者自身が本書の中で著している通り、二重の意味で流行を追った本です。 感想としては、面白いが薄いといったところでしょうか。なるほど、平成元年から今までというとちょうどバブル崩壊直前からの移り変わりが示されていてなかなか鮮烈なものが多くなります。普通の本でそんなことをすれば恣意的な切り取りとされるのでしょうが、あくまで平成振り返り本ならばそれで正しいわけです。高度経済成長を経験したことで「強い日本」の幻想をいまでも持っている人々や、逆にバブル崩壊以降に生まれて「化け物じみ(ているように見え)た日本」を知らない世代にはいい刺激になるスコープなのだと思います。 ただ、普段から社会問題に興味がある人ならば、見たことがあったり直感通りのデー...
政治制度・統治機構・法学

新書 「世論」 W・リップマン 星2つ

1. 世論 20世紀を代表するジャーナリストの一人、ウォルター・リップマンによって著された評論エッセイで、タイトル通り「世論」について取り扱っております。華々しい経歴を持つリップマンですが、「ステレオタイプ」という言葉を世に根付かせたと書けばその偉大さが伝わるのではないでしょうか。新聞・ラジオ・テレビという近代型メディアの登場と民主主義の組み合わせが人々の世界に対する「見方」をどのように規定していくのかという箇所に論の重点がおかれ、人々が抱いてしまうバイアスの傾向について現代にも通じる鋭い指摘を行っております。 「評論エッセイ」と表現しました通り、かなり散漫で体系だっていないのが決定的難点ですが、それでも1922年という発表年を考えるとその叡智は驚くばかり。「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」という警句の示す通り、社会に対する考え方が纏まってきた時期に読むと「自分の考えなど車輪の再発明にすぎないなぁ」と思ってしまうこと請け合いです。 2. 目次 <上巻>第1部 序第2部 外界への接近 第3部 ステレオタイプ 第4部 さまざまの関心 ...
経済・金融・経営・会計・統計

教養書 「ウォール街のランダム・ウォーカー」 バートン・マルキール 星2つ

1. ウォール街のランダム・ウォーカー 1973年の書版発行以来、投資界隈で読み続けられている本であり、2016年発売の日本語最新版が第11版の訳書になります。ネット証券が台頭し、NISAやiDECOといった個人向けの投資制度も充実してきた昨今、投資についての基礎を身に着けておいて損はないでしょう。年金がGPIFによって運用されるようになったことで、年金の現状について一家言持つにはGPIFのポートフォリオを語れる必要が出てきたため、政治学に興味がある立場としても面白いのではないかと手に取りました。 評価としては微妙だった、というところですね。全般的に誤ったことが書いてあるとは思わないのですが、世界史や経済・金融の知識が全くない人向け(大学で学んでいない人)の説明が全般的に目立つ一方で、前半のほとんどを世界史上に起こったバブル事例の説明に消費してしまうなど、レベルの統一感がない構成になっており、どういった層を満足させられるのだろうという疑問を感じてしまいました。 ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉 ―株式投資の不滅の真理 posted with ヨメレバ バー...
政治制度・統治機構・法学

教養書 「有権者の選択」 平野浩 星2つ

1. 有権者の選択 以前に紹介した「二大政党制の崩壊と政権担当能力評価」と同じく、アンケート調査から日本の有権者の投票行動を研究する本です。「二大政党制の崩壊と政権担当能力評価」は「政権交代期における政治意識の全国的時系列的調査研究」というシリーズでまとめられているのに対し、本書は「変動期における投票行動の全国的・時系列的調査研究」シリーズの一つとして刊行されています。とはいえ、その二つの研究が看板を変えただけの続きものになっているのが実質らしく、むしろ継続性のある統計データとして双方の中で扱われているくらいです。 しかし、本書は星を一つ下げて星2つとしています。理由は、「データや統計結果に驚きや新鮮さがないこと」と「論全体に有用で核心的な主張がないこと」です。データセットに近いという点では「二大政党制の崩壊と政権担当能力評価」と同じなのですが、それでも、投票行動についてうまく「説明している」とは言い難い、ピントを外した統計処理の当て方や文章での論証がされているように感じました。 有権者の選択―日本における政党政治と代表制民主主義の行方 posted with ヨメレバ...
☆☆(新書・教養書)

新書 「スポーツ国家アメリカ」 鈴木透 星2つ

1. スポーツ国家アメリカ 著者は慶応大学教授でアメリカ文化研究が専門の鈴木透教授。「民主主義と巨大ビジネスのはざまで」というサブタイトル通り、政治や経済との関わりが意識された内容でした。帯には伝説の野球選手であるベーブ・ルースや、近年興隆するアメリカ女子サッカーの一場面を捉えた写真と共にトランプ大統領がプロレスのイベントに参加する写真も掲載されており、本書の雰囲気が伝わってきます。 ただ、内容の質としては、知識面においてWikipedia記事の寄せ集め、論理面においてやや強引なこじつけが多くみられました。「アメリカ・スポーツ・政治・ビジネス」に関心があり、最初からある程度の知識がある人は読む必要がなく、そうでない人にわざわざ推奨するほどの本でもないというのが正直な感想です。 スポーツ国家アメリカ - 民主主義と巨大ビジネスのはざまで (中公新書) posted with ヨメレバ 鈴木 透 中央公論新社 2018-03-20 Amazon Kindle 楽天ブックス
経済・金融・経営・会計・統計

新書 「稲盛和夫の実学 経営と会計」 稲盛和夫 星2つ

1. 稲盛和夫の実学 経営と会計 アメーバ経営で有名な京セラの創業者であり、日本航空の再生でも力を振るった名経営者、稲盛和夫さんが会計について記した本になります。 いかにも昔ながらの実務者が語るという内容で、精緻さや体系の美しさはありません。普遍的な理論を求めている人には不向きでしょう。ただ、行動経済学が注目を浴びているように、政治学や経済学ではどのような人物を「普通の人間」と想定するか、現実における「摩擦」をどう扱うかはホットなトピックです。この「摩擦」という点について示唆のある内容もちらほらあったため、そこを評価して星2つとしました。 稲盛和夫の実学―経営と会計 posted with ヨメレバ 稲盛 和夫 日本経済新聞社 2000-11-07 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo
住宅・土地政策

教養書 「都市農地はこう変わる」 倉橋隆行 星2つ

1. 都市農地はこう変わる もともと住宅・土地問題に関心があるのですが、その界隈で「生産緑地」問題が浮上し始めてきたことから手に取った本です。「生産緑地」で適当に検索して購入したのであまり期待はしていなかったのですが、まぁ、そのたいしたことない期待の程度だったという感想。 著者が不動産コンサルということもあり、学術的で客観的な分析と言いうよりは、土地保有者向けの土地活用術の本という雰囲気が濃いものでした。 都市農地はこう変わる posted with ヨメレバ 倉橋 隆行,林 愛州 プラチナ出版 2017-09-07 Amazon Kindle 楽天ブックス
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