☆☆☆(小説)

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☆☆☆(小説)

小説 「ビルマの竪琴」 竹山道雄 星3つ

1. ビルマの竪琴東大教授などを歴任したドイツ文学者、竹山道雄氏が生涯で唯一記した小説です。1956年と1985年の2回にわたって映画化されておりまして、1956年版はアカデミー賞の外国映画賞にもノミネートされるなど評価の高い作品です。小説の方も毎日出版文化賞を得るなど、文学として高く評価されています。確かに、小説としての技巧という意味では本職の小説家が書いたわけではないのだなぁと思わせられる面が多々ありますが、戦争のやりきれなさ、そして鎮魂にかける想いの描き方は出色であり、意外な視点と豊かな発想力には驚かされました。ビルマの竪琴 (新潮文庫)posted with ヨメレバ竹山 道雄 新潮社 1959-04-17AmazonKindle楽天ブックス
☆☆☆(小説)

小説 「スタンド・バイ・ミー」 スティーヴン・キング 星3つ

1. スタンド・バイ・ミー映画としても人気を博したスティーヴン・キングの有名作品。小説としての原題は「THE BODY」、つまり「死体」なのですが、映画に倣い、日本で出版される小説では邦題として「スタンド・バイ・ミー」が使われています。内容としては「ひと夏の冒険」もので、ベタといえばベタなのですが、そこはさすがのキングで、まさにこの王道を彼のものとして上手く扱っています。少年から脱皮していく時期の不安、幼性からの決別がノスタルジーを喚起する形で描かれており、やや冗長な部分など見られましたが、十分に佳作といえるでしょう。スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)posted with ヨメレバスティーヴン・キング 新潮社 1987-03-25AmazonKindle楽天ブックス
☆☆☆(小説)

小説 「1984年」 ジョージ・オーウェル 星3つ

1. 1984年全体主義への警鐘を鳴らす、言わずと知れた有名小説です。不安定な政治状況から近年でもアメリカなどを中心に売り上げを再び伸ばしています。テレスクリーンによる監視や、思考の「幅」を狭める新言語ニュースピーク、「憎悪時間」など、全体主義体制が到る悲惨な政治的状況をこれでもかと描く力の鋭さ・強さにおいては文句のつけようがありませんが、小説としてのストーリーにはやや凡庸な面もあり、評価に迷う作品です。一九八四年 (ハヤカワepi文庫)posted with ヨメレバジョージ・オーウェル 早川書房 2009-07-18AmazonKindle楽天ブックス
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時雨沢恵一

小説 「アリソン」 時雨沢恵一 星3つ

第1巻1-1.アリソン「キノの旅」シリーズで有名な時雨沢恵一さんの作品で、後続のシリーズ作品群と合わせて「一つの大陸の物語シリーズ」と呼ばれています。戦闘機が出始めごろの時代における架空の大陸を舞台に、孤児院育ちの青年男女が国を跨いで活躍する冒険活劇、というなかなか珍しいジャンル。「剣と魔法」ならぬ「銃と戦闘機のファンタジー」という形容が相応しいかもしれません。深い感動、というわけにはいきませんでしたが、ライトノベルというよりは往年の児童向けファンタジーを思い起こさせるポップな文体でスラスラ読むことができました。
サン・テグジュペリ

小説 「夜間飛行」 サン・テグジュペリ 星3つ

1. 夜間飛行「星の王子さま」で有名なサン・テグジュペリの作品。飛行機乗りだった当人にとっては、こちらこそまさに本職の小説でしょう。過酷な任務に挑戦する男たちが時代の新境地を拓いていく様子。それが淡々とした筆致で、しかし、情熱的に叙述されるのは見事でした。夜間飛行 (新潮文庫)posted with ヨメレバサン=テグジュペリ 新潮社 1956-02-22AmazonKindle楽天ブックス
カミュ

【共感は欺瞞】小説「異邦人」カミュ 評価:3点【海外文学】

ノーベル賞作家、アルベール・カミュの代表作です。面白いと思う人とつまらないと思う人が分かれる作品ですが、私は好みです。「共感」ばかりが重要視され、真実を客観的に見る視点を失った現代社会。「誰もがそう思っている」に過ぎない「常識」が、まるで「道徳・正義」のように扱われる今日。そのような風潮に疑問を投げかけ続ける古典の佳作です。あらすじ主人公、ムルソーの母が養老院で亡くなるところから物語は始まる。葬儀に参加するために養老院へ向かうも、涙一つ見せず、母の死体も見ず、ミルクコーヒーを楽しむムルソー。その翌日には恋人のマリィと海水浴に行き、映画を見て笑う。何事にも動じず、淡々と過ごす彼だが、頼まれれば友人を助け、話を聞き、遊びに誘われればついてゆく。その理由は「それをしない理由がないから」だとムルソーは言う。理性・感情を持ちながら、一切の「人間らしさ」がないように見えるムルソー。ある日、彼はビーチでアラビア人を殺し、裁判にかけられることになったのだが......。感想味のある良い作品だと思います。母の死に涙を流し、我を忘れるほど思いつめること、その後しばらくは立ち直れないこと。そんな人物を、我々...
☆☆☆(小説)

「O・ヘンリ短編集」O・ヘンリ 評価:3点|短編の名手が贈る風格と哀愁の作品集【海外文学】

第一巻19世紀に活躍した短編の名手、O・ヘンリの作品集。アメリカの都会に生きる人々の哀愁と情緒あふれる生活がシニカルさと人情味をもって描かれている、そんな作品たちでした。あらすじ「緑の扉」ルドルフ・スナイダーは街を歩いているとき、チラシ配りの男から「緑の扉」と書かれたチラシを受け取った。不審に思いもう一度チラシ配りの前を通ってみるが、やはり他の人とは違い、自分にだけそのチラシは配られる。周囲を見渡し、緑の扉のアパートを発見したスナイダー。彼がドアを開けると、そこには女性が倒れていて.....。「ハーグレイブズの一人二役」ワシントンのある家に間借りしているのは、南部出身の堅物、トールボット少佐。そのあまりに古風なふるまいを周囲は嗤うのだが、ただ一人、 ハーグレイブズ青年だけは彼の昔話を熱心に聞いていた。感心するトールボット少佐だったが、ある日、トールボット少佐が劇を見に行くと、そこにはおもしろおかしく少佐の真似をする役者ハーグレイブズがいて......。以上2編を含む16編を収録。感想どの話もウィットが効いていて非常に面白いです。人間のちょっと間の抜けたところや勘違い、思わぬ行き違いなど...
☆☆☆(小説)

小説 「六番目の小夜子」 恩田陸 星3つ

1. 六番目の小夜子第3回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となり、恩田陸さんのデビュー作となった本作。学園小説の名手である恩田陸さんの原点というべき作品です。「明るくハッピーな話」「後味の悪い背徳的な話」「悲しく切ない話」。近年の小説はそういった小説そのものの「キャラ付け」が求められています。しかし、そのどれにも属さず、しかし、心に訴えかけるものがある。小説の「テンプレ化」が進む時代の直前に書かれた名作です。六番目の小夜子 (新潮文庫)posted with ヨメレバ恩田 陸 新潮社 2001-01-30AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo
☆☆☆(小説)

小説 「夏と花火と私の死体」 乙一 星3つ

1. 夏と花火と私の死体山白朝子、中田永一名義でも有名な乙一さんのデビュー作。16歳でこのストーリーを書ききるのはまさに衝撃だといえるでしょう。稚拙なところも多いように感じられましたが、才気溢れる作品です。夏と花火と私の死体 (集英社文庫)posted with ヨメレバ乙一 集英社 2000-05-01AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo
小川洋子

【心温まる純文学】小説 「博士の愛した数式」 小川洋子 星3つ

1. 博士の愛した数式第1回本屋大賞を受賞したミリオンセラーです。数々の文学賞を受賞されている小川洋子さんの作品の中でも、間違いなく最も知名度が高い作品でしょう。温かさ、柔らかさの中に、人間の哀しみをほんの一滴だけ混ぜたような、決して明るい設定ではないながらも読者を素直にさせてくれるような、そんな佳作に仕上がっています。2. あらすじ「あけぼの家政婦紹介組合」で働く「私」は組合の紹介を受け、ある家庭に派遣されることになる。義弟の世話をして欲しい、依頼主の老婦人はそう言って、離れに住む老人のところで働くよう「私」に要請する。その老人こそ、数学の天才である「博士」であった。「博士」のところへ派遣されるのは「私」で九人目。多くの家政婦が続かなかったのには訳がある。それは、「博士」の記憶が80分しか維持されないから。記憶は80分しか維持されず、常に数学に熱をあげている。そんな変わり者の「博士」に最初は戸惑う「私」だったが、「私」の息子である「ルート」と「博士」との交流をきっかけに、「私」は博士の優しさと数学の魅力に気づいていく。ささやかだけれど、かけがえのない幸福に満ちた日常。しかし、博士が記...
☆☆☆(小説)

小説 「すいかの匂い」 江國香織 星3つ

1.すいかの匂い直木賞をはじめ華々しい受賞歴を誇る人気作家、江國香織さんの短編集です。少し陰惨で生々しい少女時代の記憶・感覚。それが本書に通底するテーマであり、江國さんの瑞々しい筆致からはまるでその日々の手触りや匂いまでもが伝わってくるようです。すいかの匂い (新潮文庫)posted with ヨメレバ江國 香織 新潮社 2000-06-28AmazonKindle楽天ブックス
☆☆☆(小説)

小説 「あすなろ物語」 井上靖 星3つ

1. あすなろ物語歴史小説を中心に名作が多い井上靖さんの自伝的小説です。外国語に翻訳された小説も多く、ノーベル文学賞候補だったいう話もあるくらい実力のある作家。本作でもその力量は遺憾なく発揮され、情動と苦悩の青春が抒情的な美しさで綴られています。ややご都合主義的な場面や詩情を優先したあまりの非現実的な描写も見られますが、全体としてはかなりの良作です。あすなろ物語 (新潮文庫)posted with ヨメレバ井上 靖 新潮社 1958-12-02AmazonKindle楽天ブックス
☆☆☆(小説)

小説 「砂漠」 伊坂幸太郎 星3つ 

1. 砂漠仙台に立地する大学を舞台にした青春群像劇です。2004年から2016年まで13回の本屋大賞のうち、大賞1回、ノミネート6回、ノミネート作品10作品を誇る伊坂幸太郎さんの作品の中では賞に縁のない本作ですが、洒脱でテンポも良く、期待通りの面白さでした。砂漠 (新潮文庫)posted with ヨメレバ伊坂 幸太郎 新潮社 2010-06-29AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo
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