小説(評価)

パウロ・コエーリョ

小説 「アルケミスト」 パウロ・コエーリョ 星2つ

1. アルケミスト ブラジル出身の作家、パウロ・コエーリョの代表作で、累計発行部数が1億部を超えるという世界的な大ベストセラーです。原著は1993年発行で、日本語版は1997年の発行。当時、書店で大プッシュされていたことを記憶している人もいらっしゃるのではないでしょうか。 そんな偉大な作品に対してやや傲慢な態度になってしまうかもしれませんが、個人的には凡作であると感じました。抽象的で浮ついた言葉がそれっぽい雰囲気を醸し出しているだけで心を動かすような本当の内容というものが存在せず、物語そのものはいたって普通。読んで不快になることはありませんが、読破した直後の気分としては「ふーん」で終わってしまった作品です。 2. あらすじ スペインのアンダルシア地方を拠点に活動する羊飼いの少年サンチャゴはある日、セイラムの王様メルキゼデックだと名乗る老人と出会う。王様は少年が飼っている羊の十分の一を対価に、宝物が眠る場所を教えてくれるという。悩んだ末、少年が羊を連れて王様のもとへ再びやって来ると、宝物はエジプトのピラミッドにあるのだと王様は言い、少年にウリムとトムミム...
武田綾乃

小説 「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編」 武田綾乃 星2つ

1. 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 全国大会金賞を目指す公立高校、北宇治高等学校吹奏楽部で起こる様々な事件を描いた青春小説シリーズの2年生編。その後編になります。前編の記事はこちら。 また、言うまでもなく本書は京都アニメーションが手掛けるアニメ版の原作として(の方が)有名でしょう。私もアニメ版から入った口です。アニメの感想はこちら。 映画「リズと青い鳥」で描かれたみぞれと希美の関係性についての物語はそこそこ良かったものの、それ以外の群像劇はどこで面白くさせようとしているのか分からないくらいイマイチでした。 2. あらすじ 低音パートの後輩たちが起こした諍いを何とか諫め、パートをまとめ上げることに成功した黄前久美子(おうまえ くみこ)だったが、部全体としての音楽の出来には不安が残っている北宇治高校吹奏楽部。 低音パートでは3年生である中川夏紀(なかがわ なつき)の実力不足は明らかで、トランペットパートでは1年生ながらにして実力十分、特に高音が得意な小日向夢(こひなた ゆめ)が何...
夏目漱石

小説 「こころ」 夏目漱石 星3つ

1. こころ 日本文学を代表する作家、夏目漱石のそのまた代表作といってもよいでしょう。長年の高校教科書掲載作品としても有名で、書籍を手に取って読んでみたことがないという人でも教科書掲載部分の内容くらいはなんとなく覚えているのではないでしょうか。また、累計発行部数は700万部を超えており、日本で最も売れている小説であることから、書籍として手に取り通読したことがあるという人もそれなりにいるのだと思います。 そんな本書は恋愛の三角関係が物語後半の枢要を占めることもあり、殊更に恋愛小説面を強調したプロモーションがかけられることも多いように感じられます。しかし、本書の主題は「時代の趨勢と人々の『こころ』」であり、漱石自身もそれを意識して書いたという解釈が通説となっております。派手なアクションシーンや意外などんでん返しなどがあるわけではなく、ぐいぐい感情を揺さぶられるというわけではありませんが、手堅い面白さのある作品です。 2. あらすじ 東京帝国大学の学生である「私」は夏休みに訪れていた鎌倉の海岸で「先生」と出会う。ひょんなことから「先生」との交流を始めた「私」...
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武田綾乃

小説 「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 前編」 武田綾乃 星2つ

1. 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 公立校の吹奏楽部が全国を目指すという内容の人気シリーズ小説で、どちらかというとアニメ版の原作として有名でしょうか。アニメ版は放火事件の起こった京都アニメーションが製作しており、レベルの高い作画や音楽表現、独特のカット割りなどで人気を博しております。私もアニメ版のファンでして、当ブログでも記事を書いております。 ついでに原作小説にも手を出しており、辛口となってしまっておりますがこれも紹介記事を書いています。 さて、本作はシリーズの中で主人公の世代が進級し、2年生として活躍する2年生編となっておりまして、アニメ版では「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」にあたる部分です。 感想としては、散漫な物語と表現力不足によって平坦かつ無個性に見えてしまうキャラクターという2つの要素が災いし、小説というより説明書を読んでいるような気分になる作品でした。 アニメでは効果的な編集とアニメならではの感情表現などで補われていたのでしょうが(というかそこを補えばい...
梨木香歩

小説 「西の魔女が死んだ」 梨木香歩 星1つ

1.西の魔女が死んだ 児童文学作家である梨木香歩さんの作品。1994年に単行本、2001年に文庫化された小説で、特に文庫化の頃に爆発的に流行った記憶があります。当時のベストセラーで100万部以上売れていたうえ、いまでも「新潮文庫の100冊」でレギュラー的な扱いなので部数を伸ばしていることでしょう。 ざっくり言うと「学校に行きづらくなった少女まいがお祖母ちゃんと共に田舎の家で過ごすことでその心が再生していく過程を温かく描く」という小説なのでなかなか批難しづらい小説(少しでもケチをつけると心無い人だと思われそう)ですが、そんな心理的抵抗を乗り越えつつ星1つを本ブログではつけます。中身のない小説です。 2.あらすじ 学校にうまく馴染めず、不登校になったしまった中学一年生のまい。母親の勧めにより、まいは田舎のおばあちゃんと一緒に過ごすことになる。 そんなまいを温かく迎え入れたおばあちゃん。ジャムをつくったり鶏の世話をしたりして過ごす生活のことをおばあちゃんは「魔女修行」と呼んだ。それは 「早寝早起き。食事をしっかりとり、よく運動し、規則正しい生活をする」...
サン・テグジュペリ

小説 「人間の土地」 サン・テグジュペリ 星2つ

1. 人間の土地 郵便輸送機や偵察機のパイロットとして戦間期から第二次世界大戦にかけて活躍し、その傍らで自身の経験を元にした著作を多数発表した作家サン・テグジュペリの作品。彼の作品では「星の王子さま」「夜間飛行」の次に有名でしょう。新潮文庫版ではカバー絵及び解説を宮崎駿が担当するなど、各方面への影響の大きさが伺えます。「夜間飛行」のレビューはこちら。 評価としては「夜間飛行」に一歩劣るといった印象。飛行機乗りとしてサン・テグジュペリが経験した様々な出来事はどれも印象的で烈しいものですが、「物語」としての質を問われるとイマイチです。 2. あらすじ ベンガジを発ったサン・テグジュペリ機は夜空に迷い、砂漠の上に不時着してしまう。機体は炎上し、サン・テグジュペリと同乗していたプレヴォーの二人は着の身着のままで砂上に放置された。 街の灯りも見えない砂漠の中、三日三晩彷徨い続ける二人の僚友。食料も水も尽き果て、幻覚が見えるようになる。生きることに挫けそうになりながらも立ち直り、生存への道筋を探していく。 「愛するということは、おたがいに顔...
中島敦

小説 「李陵・山月記・弟子・名人伝」 中島敦 星4つ

1. 李陵・山月記・弟子・名人伝 高校の教科書掲載作品としてお馴染みの「山月記」ほか、中島敦の代表的作品を連ねた短編集です。「李陵」及び「山月記」は巻末の「参考文」にある通り実在する中国の古典を改変したもので、オリジナル作品かと問われれば結構答えに窮するのではないかと思うのですが、「山月記」の教科書掲載によりフィクション作家として多くの人に名前を知られているのが中島敦という小説家です。 「山月記」はやはり名作で、多くの(国語・文学好きの)心を掴んで離さない作品としてこれからも輝き続けるのだろうと思わされました。それ以外では「名人伝」がそれなりに楽しめましたが、そのほかの作品は淡々とし過ぎてあまりよく分からなかったというのが正直な感想です。 2. あらすじ ・名人伝 紀昌という男が天下一の弓の名人を目指し飛衛という名手に弟子入りする。しかし、飛衛は紀昌に弓を持たせず、基礎訓練として瞬きをしない訓練や視力を上げる訓練を命じるのだった。紀昌は素直に従い、鍛錬を続けること五年、ついに飛衛から奥義伝授を許可され、瞬く間に腕前を上げていく。最後には飛衛との弓...
青木祐子

小説 「これは経費で落ちません ~経理部の森若さん~」 青木祐子 星1つ

1. これは経費で落ちません いわゆる「ライト文芸」や「キャラ文芸」と呼ばれるジャンルの作品で、「働く女性(都市部の事務員)」が主人公と、流行りの要素を詰め込んだ作品。シリーズは現在(2019年9月)時点で6巻まで刊行されており、累計70万部突破と出版不況の中で気を吐く人気作品です。NHKでドラマ化もされており、2019年7月から放送されています。 しかしながら、私個人としてはあまり楽しめませんでした。いかにもフィクションな「キャラクター」で埋め尽くされる現実感のない職場が舞台で、「経理部」や「経費」という表題の要素もおまけ程度で掘り下げられることもなく、いわゆる「日常の謎」をさらに薄めたような、起伏も何もあったもんじゃない程度の出来事ばかりで物語は進行します。リアリティがないのに日常ものという長所が見出しづらい作品で、なぜヒットしているのか理解しがたいというのが正直な感想です。 2. あらすじ 主人公、 森若沙名子(もりわか さなこ)は 20代後半 。「天天コーポレーション」の経理部に勤めている。部長を含め4人の経理部の中では3番目の年次だが、その的...
中勘助

小説 「銀の匙」 中勘助 星2つ

1. 銀の匙 大正から昭和にかけて活躍した小説家、中勘助の代表作です。夏目漱石が本書を絶賛して東京朝日新聞への連載が決まったことから中勘助は小説家として見出されていきました。また、灘中学校において橋本武先生が三年間の国語の授業を本作精読に使っていたという、伝説の授業に関連する書籍としても名前を知られています。 2. あらすじ 主人公である「私」は時々、書斎の棚から小さな銀の匙を取り出して眺める。それは虚弱体質だった「私」に薬を飲ませるために伯母が探してくれた特別な匙だった。 痩せぎすでぼんやりとした子供だった「私」。療養のため引っ越した小石川でもその引っ込み思案は続いていたが、伯母の紹介でお国さんという女の子と遊ぶようになる。お国さんと遊ぶうちに積極性が出てきた「私」だったが、学校へ入学する年齢になると「どうしても学校には行かない」と駄々をこねるようになり......。 3. 感想 夏目漱石の絶賛や橋本先生の言葉に違わず、美しい日本語によって書かれているというのは納得できましたし、その濃やかさがひたひたと心に染みわたるような感覚になったのは...
武田綾乃

小説 「その日、朱音は空を飛んだ」 武田綾乃 星1つ

1. その日、朱音は空を飛んだ 大学在学中に「今日、きみと息をする」で日本ラブストーリー大賞の「隠し玉」を射止め、大学生で小説家デビューを果たした武田綾乃さんの作品。本作で吉川英治文学新人賞の候補になるなど、新進気鋭の若手作家として注目を集めております。 代表作はなんといっても「響け!ユーフォニアム」シリーズでありまして、本ブログでも何度か取り上げてきました。 そんな「響け!ユーフォニアム」シリーズの合間に出版された本作ですが、全体としては非現実感やあまりの極端さが強く前面に出てしまっていてイマイチだったという感想。確かに、極端に個性的なキャラクターを出せば突飛な行動を起こしてくれるの物語に起伏はつきますが、そこに読者として感情移入しスリルを感じられるかといえば難しいところ。変わった性格のいかにもフィクション的登場人物が変わったことをするだけの話であり、小説としての技巧や物語から受ける驚きは薄いものでした。 2. あらすじ 舞台はとある進学校、ある日、 2年生の川崎朱音(かわさき あかね)が屋上から飛び降りて自殺してしまう。 何...
☆☆(小説)

小説 「夏草の記憶」 トマス・H・クック 星2つ

1. 夏草の記憶 日本では「記憶」三部作で有名なアメリカのミステリー作家、トマス・H・クック。「緋色の記憶(原題:The Chatham School Affair)」でエドガー賞を獲得し、アメリカでも一定の評価を得ています。本作「夏草の記憶(原題:Breakheart Hill)」も日本では記憶三部作として売り出された三作品の一角で(原題を見ての通り作品間には何の関連もないのですが、プロモーションのため強引な訳出がされています)、いわゆるジュブナイル的青春ミステリのような要素があるため、令和に入ったいま読んでも流行を狙ったのかと思うくらい日本に馴染む作品だと個人的には感じています。もちろんミステリ要素も評価されておりまして、2000年の「このミステリーがすごい! 海外編」では3位に入っています。 さて、そんな「夏草の記憶」ですが、個人的には「普通」だなというのが感想です。決定的な悪い点はなく、良い点は微妙にありまして、☆3つと☆2つで迷ったのですが、ある種ベタすぎる、という部分を欠点と捉えて良い点と相殺し、☆2つに落ち着きました。 2. あらすじ 舞...
加納朋子

小説 「少年少女飛行倶楽部」 加納朋子 星1つ

1. 少年少女飛行倶楽部 「日常の謎」を描いたミステリーで定評のある加納さんですが、本作は珍しくミステリー要素なし。あとがきでも「底抜けに明るい、青春物語が書きたくなりました」とあるように、中学生の爽やかな青春譚という雰囲気です。 感想としては、全体的に軽すぎるかなという印象。変わり者の集まった部活である「飛行クラブ」の活動を描いた物語なのですが、登場人物が意味もなく非現実的でいかにも「作り物」感があります。問題の解決方法も軽々しく、どこで心を動かされればよいのだろうかと思ってしまいました。 2. あらすじ 中学一年生になった海月(みづき)、幼馴染の樹絵里(じゅえり)に誘われるがまま入部することになったのは「飛行クラブ」という奇妙な部活。二人以外の部員は部長の斎藤神(さいとう じん)先輩と野球部と兼部の中村海星(なかむら かいせい)先輩だけ。「(飛行機やヘリコプターを使わず、パラシュートなどの「落下」を除いた手段で)飛行すること」を活動内容として掲げているが、実際には何もしていない。部活強制の学校で孤高を貫く神先輩が他の部活に入らないために立ち上げただ...
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