2017-07

スポンサーリンク
政治制度・統治機構・法学

教養書 「日本の中央―地方関係」 市川喜崇 星3つ

1.日本の中央―地方関係地方分権が叫ばれて久しい今日ですが、政治学では昔から「集権」「分権」は大きなテーマでした。そして、2012年に刊行された本書は、著者も認めるところの、これまでの通説に正面から斬ってかかった著作となっております。戦後日本は「明治以来の集権体制」なのか「分権の進んだ民主国家」だったのか。その切り分けがまだあなたの頭の中にあるならば、この本は十分な威力を発揮するでしょう。日本の政治に関心がある人ならば一度は読んで欲しい本です。日本の中央―地方関係: 現代型集権体制の起源と福祉国家posted withヨメレバ市川 喜崇 法律文化社 2012-11-09AmazonKindle楽天ブックス
エミリー・ブロンテ

「嵐が丘」エミリー・ブロンテ 評価:2点|世界の十大小説にも選ばれている英国ロマン主義文学の愛憎劇【海外純文学】

英国の著名な作家、ブロンテ三姉妹の二番目、エミリー・ブロンテの小説です。サマセット・モームの「世界の十大小説」にも選ばれる歴史的名作だそうです。とはいえ、大いに楽しめたかと言われればそうではありません。二つの家系の愛憎劇は序盤こそスリリングに思えるものの、ただ愛憎劇が繰り返されるだけの単調さは飽きが来るのも早いです。あらすじ都会から旅に出た青年ロックウッドは、「スラッシュクロス」という田舎の屋敷に泊まることにする。近隣にもう一つある屋敷、「嵐が丘」を訪れたロックウッドだったが、そこでの歓迎は非常に手荒いものであり、ロックウッドは困惑する。「スラッシュクロス」に帰ったロックウッドは「嵐が丘」の住人がそうなってしまった理由を屋敷の女中であるエレンから聞かされる。「嵐が丘」に拾われた子供であるヒースクリフと、「スラッシュクロス」のお嬢様であるキャサリンとの歪んだ恋。それは愛し合い、そして憎しみ合った二つの家の、長きにわたる陰惨な物語......。感想非常に高尚で格式高く書かれた昼メロです。富豪の家に拾われたヒースクリフが家庭をズタズタに引き裂き、そして自身をも破滅に導いていくという筋書きは確...
僕らのウォーゲーム

「ぼくらのウォーゲーム!」細田守 評価:3点|情熱と技巧と夏の切なさが詰め込まれたデジモン映画の佳作【アニメ映画】

人気シリーズ「デジモンアドベンチャー」の映画2作目。いまでは著名となった細田監督が指揮した作品です。アニメファンからの高評価を聞いて試聴してみましたが、40分と短い中で冒険アニメの良さを存分に引き出した作品だと感じました。あらすじデジモンたちと別れ、それぞれの生活を楽しむ太一たち。しかし、西暦2000年の春休み、ネット上で生まれた新種デジモンがまたたく間に進化。NTTからアメリカの軍事機関まで、ありとあらゆる場所を侵食していった。このデジモンの暴走を止めるため、パートナーのデジモンたちと一緒に再び戦いへと身を投じる太一たち。あまりにも凶悪なデジモンとの戦いは熾烈を極め、そしてついに、謎の新種ポケモンは核ミサイルを発射させてしまう。ミサイルが着弾されるまでの時間は10分間。太一たちは世界を救うことはできるのだろうか......。感想非常に巧妙で感動的な映画でした。「大量に送られてくる応援の名を借りた迷惑メール」を最後に武器として活かす展開は意外性がありながら少年向けアニメの王道でもあって胸を打たれます。また、空と太一の関係性も絶妙。アニメの趣旨を理解した、恋愛をバトルに持ち込ませないよう...
夜明け告げるルーの唄

【音楽の映える青春アニメ】映画「夜明け告げるルーの唄」湯浅政明 評価3点【アニメ映画】

あらすじ舞台は田舎の港町、日無町。主人公のカイは音楽以外にハマるものはなく、無気力な生活を送っていた。そんなある日、動画投稿サイトに自らが打ち込んだ音楽をアップしたことをきっかけに、カイは同級生である遊歩と国夫のバンド「セイレーン」に誘われる。バンドの練習の帰り道、密漁を行う青年二人に襲われかけたところを、カイたちは人魚の少女ルーに助けられる。音楽を通じた交流により打ち解け合っていくカイとルー。町の人々にも好意的の受け入れられていくルーの存在だが、ある日、町おこしのためにルーを使うことが企画され……。悩みを抱える少年少女と小さな人魚の、町を巻き込んだひと夏の物語。感想序盤からこんなにもぐいぐいと引き込まれる映画は久しぶりでした。フラッシュアニメーションによる独特の絵柄がかえってリアル感を増していて、いわゆる「アニメ絵」とは一線を画す表現に生々しさがあります。テンポもたいへん良いものながら展開にも無理がなく、ルーがクーラーボックスを飛び出して砂浜で踊るシーンあたりまでは傑作だと信じて疑いませんでした。しかし、その後はやや冗長。人間の「恐ろしさ」を感じたルーの混乱と、それを助けようと町に乗...
街の灯

「街の灯」チャールズ・チャップリン 評価:2点|切ないラストシーンが印象的なチャップリンの代表作【コメディ映画】

1931年に発表された映画で、映画好きの間では定番の作品だそうです。チャップリンの代表作の一つということで見てみました。筋書きは面白いのですが、やはり全体的に表現が冗長だと感じます。あらすじチャップリン扮する浮浪者の男は、おふざけばかりの生活で日常を過ごしていた。そんな男はある日、花売りの少女に一目惚れしてしまう。本来ならば見込みがない恋だが、花売りの少女は盲目であり、ひょんなことから男のことを別の大金持ちと取り違えてしまう。貧しい盲目の女性に献身しようと男は身を粉にして働くようになるのだが、男は大富豪の家に入った強盗として逮捕されてしまい.......感想もうちょっと圧縮できるのに、というのが正直な感想です。テンポの良い現代の作品と比べてしまうとかなり冗長に感じてしまいます。各コメディシーンも、当時は斬新だったのかもしれませんが、いまとなってはややグダグダ感があり、一般の視聴には堪えないでしょう。映画好きは細かいところをいろいろ褒めるのかもしれませんが、フィクション作品である以上、気づかれなければ存在しないことと同じです。ただ、ラストシーンはやはりジーンときました。短い「You?」の...
千年女優

「千年女優」今敏 評価:2点|大女優が歩んだ数奇で大胆な人生の記録【アニメ映画】

「パプリカ」等を手掛け、アニメーション映画界では著名な今敏監督の作品。込み入った手法は面白く、オタク受けする作品であることは間違いないでしょう。しかし、単純なエンターテイメント性には欠けるうえ、人生の深さを描くという純文学的な意味でも曖昧に過ぎ、相当程度オタク的な「解釈」なしに楽しめる作品ではなかった点が残念。テンポの良さや映像美は高品質ですが、テーマや脚本も含めた映画作品としての総合評価としては凡庸な作品だったという印象です。あらすじ真夏の山道を歩くのは映画制作会社社長の立花源也と、カメラマンの井田恭二。彼らは山奥にある藤原千代子の家を訪れようとしているのだった。藤原千代子という女優。既に引退してから長い時間が経っているものの、日本映画界を支えてきた名女優としての名声は計り知れない人物である。インタビューの冒頭、立花は千代子に「鍵」を手渡す。それは千代子が長年大事にしてきた「鍵」であり、千代子の人生に大きな影響をもたらしてきた「鍵」だった。立花から渡された「鍵」をきっかけに、千代子は自分の人生を語りだす。数奇な運命を辿った大女優の人生とは.......。感想ストーリーの入れ子構造や、...
スポンサーリンク