小説 「少女には向かない職業」 桜庭一樹 星2つ

少女には向かない職業
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1. 少女には向かない職業

直木賞作家、桜庭一樹さんの作品です。彼女の作品の中ではややマイナーでしょうか。東京創元社の本というのも珍しい気がします。

内容としては初期の桜庭さんが得意な少女モノですが、ポップな文体と切なく陰惨な心情・情景描写が読ませます。ただ、ストーリーにはかなり疑問が残り、すっきりとした読後感とはいきませんでした。

2. あらすじ

下関に通じる島に住む大西葵は13歳。友人の間ではお調子者の「お笑い担当」だが、働かない義父と「邪魔しないで」が口癖の母を抱え、家庭環境に悩んでいた。

そこに追い打ちをかけるように事件が続く。義父が葵のお金を盗もうとすると、葵は暴力を振るわれ、逆にゲーセンのセーブデータが入ったカードを折られてしまう。

仲の良い男子、田中颯太も別の女子から遊びに誘われている様子。

失意の葵の前に現れたのは、奇妙な格好をした同級生、宮乃下静香。「死体を見に行こう」と言う彼女についていく葵。この時から、彼女の運命は狂い始める。

3. 感想

ある少女が二人の大人を殺す過程のお話です。ライトノベルと一般文芸の中間のような(ライト文芸と呼ぶのでしょうか)軽い文体と、決して軽くない登場人物たちの境遇、家庭環境やいじめ、暴力が描かれ、そのギャップがさらにリーダビリティを上げています。

ただ、それらの要素が全て活かしきれているかというとそうでもないところ。伏線として機能している要素は少なく、田中颯太とその恋人や、葵をいじめる同級生たちの存在、葵がゲーム好きであることがあまり物語の主線軸に関わってきません。

そこがストーリーに織り込まれていれば確かに驚嘆したのになぁと思う反面、ストーリーに深く絡める気がないからこそ気軽にぽんぽんと色々な要素が出現するのかなとも思いました。

ただ、だからこそ深読みポイントは多くあります。その中でも私が強く思ったのは、葵が作り話と断じた静香の身の上話が実は本当だったのではないかということ。

タケダさんと呼ばれて思わず振り向く描写や、髪を染めていたり、伊達眼鏡をかけているところ、従兄の浩一郎さんと争う部分の謎は解明されておらず、また、静香が本に引いた線も、自分の境遇と似ているから
線を引いたのだとも思えます。

未解明の要素が多いぶん、そういった想像も楽しい小説。傑作・名作とは言えませんが、気軽に読めるのではないでしょうか。

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