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教養書 「資本主義が嫌いな人のための経済学」 ジョセフ・ヒース 星3つ

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資本主義が嫌いな人のための経済学
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1. 資本主義が嫌いな人のための経済学

カナダの哲学者、ジョセフ・ヒースによる経済学の本。

刺激的なタイトルですが、内容の本質を表しているのは帯のコメント。「ヤバくない経済学」。経済学の主流王道基本の考えをもとに、右派そして左派にはびこる誤謬を指摘するという著作です。

2. 感想

経済学を学んだことがある人にとってはその復習に、ない人にとっては経済に関する主張を解釈する際のフィルターとして活用できます。

本著は前半と後半に大きく分かれており、前半部では右派、保守派の誤りを、後半部では左派、リベラル派の誤りが指摘されます。

例えば、「減税で経済活性化」という右派の典型的な主張があります。

しかし、前半部では税率が長期的な経済パフォーマンスに影響を与えないことが示されます。「富の生産者は民間、消費者が政府」という考えそのものが誤謬であり、お金を民間部門(家計含む)が使うか、公的部門が使うか、そして、どのようなものに使われるのか(民間なら自動車、政府なら図書館)が変わるだけというわけです。

もちろん、本書は左派の主張にも同様に斬りかかります。

特定製品の価格を政府が制限すれば、却って富裕層を利したり、負の外部性を招いてしまう。賃金を無理やり上昇させるのも、労働市場をゆがめ、供給される製品やサービスがやたらに高くなるなどの被害を招いてしまいます。

それでは、どうすればよいのか。

著者の答えは、「効率性を犠牲にせず、平等に資する政策を行う」です。

果たして、そのようなことは可能なのでしょうか。

「クラブ財」「モラルハザード」「外部性」。

本著を読み、これらの言葉の意味を理解すれば、「ある程度は可能」という結論の妥当性に頷けるでしょう。

電車の中で気軽に読めるタイトルではありませんが、語り口はいたって軽妙で読みやすいものです。

経済学に興味があるならばご一読をお勧めします。

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