映画 「万引き家族」 監督:是枝裕和 星2つ

万引き家族
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1. 万引き家族

「誰も知らない」「そして父になる」など、社会派の映画監督として国内外で高い評価を受けている是枝監督の作品。カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得したことで一躍有名になりました。リリー・フランキーさんや安藤サクラさんの名演でも知られ、2018年を代表する日本映画だといえるでしょう。

そんな本作ですが、個人的にはそれほどの名作とは思えませんでした。なかなか社会問題にフォーカスすることのない日本映画では珍しく、家族の在り方や貧困問題を描いている社会派映画のヒット作ということで期待していたのですが、単なる社会問題事例集に留まっていて、映画全体を牽引する物語が存在しなかったと感じます。個々の要素はとても良いのですが、それらの繋ぎ方や組み合わせ方によって物語に起伏を生み出すことで視聴者を驚かせたり感動させるギミックに欠けていて、「映画」というよりは「映像集」になっていた印象です。

リリー・フランキー (出演), 安藤サクラ (出演), 是枝裕和 (監督) 形式: DVD

2. あらすじ

舞台は東京。豪華絢爛な都会ではなく、団地や古い一軒家が並ぶ下町の一角。そこに5人家族の柴田一家が住んでいる。

父の治は日雇い労働者で、母の信代はクリーニング店のアルバイト。二人の給料と祖母である初枝の年金が一家の収入源であるが、それでは満足な生活はできない。治と息子である祥太の万引きも一家の生活を支える重要な仕事なのだった。

そんなある日、治は近所の団地で夜にも関わらず幼い女の子が野外に放置されているのを見かける。同情した治は彼女を連れて帰り、「ゆり」と名乗ったその少女も柴田家の仲間入りを果たすことになる。「ゆり」の身体には虐待の痕跡色濃く、両親からまともな扱いを受けていないことが推測された。しばらくすると、テレビは「北条じゅり」ちゃんの失踪事件を報道し始める。画面に映し出された被害者少女の姿はまさに「ゆり」そのもの。

時期を同じくして、治が現場で足を怪我してしまい、日雇い労働者としての収入が断たれてしまう。ますます困窮していく一家に訪れる試練とは......。

3. 感想

いうなれば「典型的な貧困事例の詰め合わせ」+「血縁でない『家族』の在り方という使い古された問いかけ」というだけの作品です。

まず前者ですが、日雇い労働者の治(成人男性)、非正規労働者の信代(成人女性)、少ない年金しか収入源のない初枝(高齢者)、万引きした商品で腹を満たす祥太(子供)、「あらすじ」には書ききれなかったのですが、風俗店(JK見学店)で働く亜紀(十代女子)。貧困状態に陥り、一度そこに嵌ってしまうと容易には抜け出せない典型的な事例がこの家族には集合しています。

もちろん、それぞれ重要な社会問題ではありますが、本作においてはとりあえず「貧乏事例」を集めましたというだけで、これらの面子を一堂に会させたことによって化学反応が起き物語の展開を心揺さぶる方向に後押しするということはありません。

次に後者ですが、実のところ柴田一家は誰一人血縁関係にありません。祥太は治が車上荒らしをした際に車内に放置されていたのを拾ってきて一家に加わっただけであり、初枝もなぜか他人である治と信代を自宅に住まわせている。亜紀は初枝の元夫の後妻の息子の娘。それでも、この一家は親密な絆で結ばれている。社会のはみ出し者同士の寄り合い所帯の中で、手段が何であれ一緒に暮らす中でまるで"本物"の家族のように繋がっている。

こういう設定って、正直のところ凡庸ですよね。再婚だったり里親だったりで血が繋がっていない家族の繋がりを描くなんて作品はいくらでもありますし、ひょんなことから共同生活を送ることになった見ず知らずの他人同士が家族同然の関係をつくりあげていくいうのもまたありがちな設定です。そんな凡庸な設定をしたからには、その中でどのように独自の感動を生み出していくかが大切だと思うのですが、そういった工夫は作中に見受けられません。血縁関係はないけれど「お父さん」と呼んで欲しいネタなんていったいどれほどの作品で使われていることでしょうか。

そして、おそらく視聴者を驚かせ惹きつけるために、作中では(しばしば反道徳的で)衝撃的なシーンが多く出てきます。祥太が「ゆり」に万引きを教える場面、いつも万引きをしている駄菓子屋で店主から「妹にはさせるなよ」と声をかけられる場面。初枝がパチンコ屋で他人の玉を盗む場面、義理の息子夫婦にお金をたかりにいく場面。亜紀が風俗店で働いている場面、そこでお客さんと密かに心を通わせる場面。信代がクリーニング品のポケットに入っていた物を盗む場面。治と祥太が共同で万引きや車上荒らしを行う場面。治と信代が初枝の死体を埋める場面、亡くなったはずの初枝の年金を不正受給する場面。

もちろん、その1つ1つが驚きをもたらすのは確かなのですが、ここでもやはり、そういった「衝撃動画」の切り貼り以上にはなっていないんですよね。パッチワークは全体の色彩の組み合わせの妙によって芸術作品になるのであって、布切れ一つ一つの色合いが良ければそれでよいというわけではないのです。

警察からの取り調べや一家離散後の状況における元柴田家それぞれの言動も、確かに悪くはないのですが、それまでの段階でもっと柴田家ならではの家族感を醸成するような物語展開なしには名シーン・名演出とまでは評価できないでしょう。

また、最後に本作で描かれる「貧困」への少しばかりの疑問を申しますと、一家五人とはいえ、日雇い・アルバイト・年金・万引きがあれば作中で描かれているほど暮らしは貧しくならないはずです。家賃やローンの支払いもありませんし、子供たちだって学校に通っていないのですから、さすがにちょっと非現実的だと思いました。

4. 結論

悪くはないのですが、個人的には凡庸止まりの作品に感じました。名作・良作というわけにはいかず、星2つが妥当でしょう。

リリー・フランキー (出演), 安藤サクラ (出演), 是枝裕和 (監督) 形式: DVD

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