オールタイムベスト 「教養書」

高評価教養書一覧

当ブログをご覧いただきありがとうございます。

記事数が多くなってまいりましたので、そろそろお薦め作品を纏めた記事があってもよいだろうと思い、本記事を作成することにいたしました。

全体的に辛い評価が多いと思われる当ブログですが、本記事で紹介するのは珠玉の名著ばかり。

是非、紹介記事をご覧いただき、手に取って頂ければと願っております。 

(並び順は著者名五十音順です)

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「憲法Ⅰ 人権」 青井美帆・山本龍彦 星4つ

【大学レベルのまともな「憲法入門」】

教養書 「憲法Ⅰ 人権」 青井美帆・山本龍彦 星4つ
1. 憲法Ⅰ 人権法学部や経済学部を卒業した方々にはお馴染み、社会科学・人文科学系学術出版社である有斐閣。基本的には小難しい本ばかりを出版している会社なのですが、「学問と高校までの知識とがどう結びつくのかを理解しながら,じっくり思考を深めるためにまず手にとってほしい1冊」を刊行するレーベルとして「有斐閣ストゥデイア」が2013年に立ち上がっています。アカデミックの正統派に立ちながらも、いわゆる大学で教科書になっているような「~学入門」のような本よりもさらに易しい筆致で書かれた本が多く、私もよくお世話になっています。そんな「有斐閣ストゥデイア」シリーズから刊行された憲法学についての入門書が本書です。憲法学としての正統性を失わず(極論が書かれた俗本ではなく)、法律系の試験対策本でもなく、それでいて過度に重箱の隅をつつくような専門的議論ばかりでもない憲法の入門書は正直なところ「ない」というのがかつての結論だったところ、ついにその位置を射止める本が出てきたなというのが本書への評価となります。まずはこの本から、と胸を張って言える入門本になっております。2...

「物語 フランス革命」 安達正勝 星3つ

【「フランス革命」の軌跡を概観する】

【物語 フランス革命】フランス革命時代の主要な出来事を手軽に概観できる新書 評価:3点【安達正勝】           
有名事件のあらましや活躍した著名人のエピソードを中心として、フランス革命の経過を「物語」風に語っていく著作。中公新書から出版されている本ですが、学術的な知識や思考を大衆に伝えるための本というよりは、世界史の教科書やwikipediaを詳しくしたような内容になっております。私もフランス革命の知識は高校の世界史止まりであり、「バスチーユ」や「ジャコバン派」、「ロベスピエール」といった穴埋め問題を解くレベルの断片的な文言だけが頭の中にある状態でしたが、本書を読むことで、フランス革命という出来事全体が「物語」として頭の中で繋がっていく感覚を得ることができました。目次序章 フランス革命とは第1章 「古き良き革命」の時代第2章 革命的動乱の時代へ第3章 国王の死第4章 ジャコバン政府の時代第5章 恐怖政治ー革命政府の暗黒面第6章 ナポレオンの登場感想ルイ16世の治世下で始まった財政改革が民衆の怒りに火をつけ、最後は王政を打倒するにまで至ったフランス革命。バスチーユ牢獄襲撃の成功によって深まる大衆の自信、ヴァレンヌ逃亡事件による国王権...

「日本の中央―地方関係」 市川喜崇 星4つ

【地方政府が持つ権限の特徴】

「戦争の世界史」 ウィリアム・H・マクニール 星3つ

【技術・軍隊・社会の相互作用による「世界史」】

教養書 「戦争の世界史」その1 ウィリアム・H・マクニール 星3つ
1. 戦争の世界史 その1古来から、人類社会と切っても切り離せない関係にあった「戦争」という営み。本書のサブタイトルである「技術と軍隊と社会」という言葉の通り、「戦争」は人類の生活に絶え間なく影響を与え続け、いまなお私たちの生活と切っても切り離せない関係にあると言えるでしょう。レトルト食品からインターネットまで軍事技術から生まれた製品は数知れず、また、「軍隊式」と呼ばれるような行動様式や規律保持方法は会社や学校と行った私たちの暮らしの中心となる場所に多かれ少なかれ浸透しています。軍隊の階級こそ戦後日本の企業体や雇用方式の源流になったという考え方は、「日本社会のしくみ」でも紹介されておりました。経済という意味でも、防衛関連産業は世界各国において主力産業となっていますし、より時間を戻せば、社会経済の全てが戦争に動員されていた時期だってあるわけです。そもそも、現存する国家(諸集団・諸社会)というものは必ず、これまでの「戦争」を生き残り滅亡を免れてきたわけですから、その歴史や特徴を考えるとき「戦争」という切り口が有効なのは火を見るより明らかでしょ...

「福祉資本主義の三つの世界」 エスピン=アンデルセン  星4つ

【「自由・保守・社民」現代福祉国家研究の古典】

教養書 「福祉資本主義の三つの世界」 エスピン=アンデルセン 星4つ
1. 福祉資本主義の三つの世界アメリカやイギリスなどのアングロサクソン諸国、ドイツやフランスなどの大陸欧州、スウェーデンやフィンランドなどの北欧諸国。同じ先進国と呼ばれていても、これらの国がそれぞれ大きく異なる政策パッケージを実施していることは政治に関心のある人間ならばぼんやりとは感じているでしょう。しかし、それらの国々の特徴を厳密に区分する指標はいったい何なのでしょうか。もちろん、イメージ論で語ることはできましょうし、個別具体的な政策についてはそれぞれの専門及び関心ある分野で様々な議論があるのだとは思います。ただ、数理的にこれといった境界線を示せと言われるとなかなか困ってしまうことも多いのではないでしょうか。そんな「先進国(=福祉国家)の分類」について論じた、現代の古典といえるのが本著であります。様々な分野の学術書で頻繁に引用されるため、題名を目にしたことはあるという人も多いと思います。感想としては、これを引用するような文献を読む人は目を通すべきといったところでしょうか。福祉国家が変容していく中で永続的に古典であり続けるかどうかは分かりませんが、まだ決して色褪せてはいない著...

「単一民族神話の起源」 小熊英二 星3つ

【日本人は「単一民族」という言説の起源を追究】

「日本社会のしくみ」 小熊英二 星3つ

【雇用慣行から分析する日本の社会構造】

「中国経済講義」 梶谷懐 星3つ

【現代中国経済の客観的な解説書】

新書 「中国経済講義」 梶谷懐 星3つ 序章・第1章
1. 中国経済講義既に中国のGDPが日本のGDPを抜いて久しく、世界の名目GDPの16%を占めるまでになった中国経済。インバウンドで観光客として来日する姿を見ると、立場は明確に逆転したのだなぁと感じてしまいます。中国経済の存在感は外交の舞台でも強く発揮されておりまして、現在進行中の米中貿易協議などはまさに象徴的。アメリカに負けず劣らずの存在感を見せるIT企業群の動向やそれに対する西側諸国の反応、一帯一路を合言葉として世界中にばら撒かれる投資マネーなど、中国経済ニュースを目にしない日はありません。しかしながら、他の国の経済が好調とあらば粗探しをしたくなるのが人間の性というもの。隣国であればなおさらという訳なのか、インターネット上では中国を一方的に見下す論調の記事が溢れかえっておりますし、書店でも中国経済「崩壊」などの文字が躍る本が平積みされています。そんな中、中国経済の「現在」について、特に世間的注目が高い分野を中心にそつなく説明しているのが本書の特徴。極端な理論にのめり込んでしまっている人にとっては「一顧だにする価値もない」書籍でしょうし、極端に触れないよう心...

「嫌われる勇気」 岸見一郎他 評価:4点

【承認欲求を捨てて自分の人生を生きる方法】

「エッセンシャル思考」 グレッグ・マキューン 評価:3点

【本質的な事柄に集中する生き方の思考法】

【最優先事項以外は不要】教養書「エッセンシャル思考」グレッグ・マキューン 評価:3点【自己啓発】
シリコンバレーでコンサルティング会社を営むグレッグ・マキューン氏の著書。2014年の発売(邦訳版)ながらながらいまだに増刷が続くロングセラーとなっております。非常に有名な書籍ですので、ビジネス書や自己啓発本に興味がある方ならば一度くらいは耳にしたことがあるタイトルなのではないでしょうか。そんなタイトルに違わず、本当に重要なこと、エッセンシャルな事柄に人生の時間を使えという内容となっております。そう表現いたしますと、凡庸な本なのでは、と思われるかもしれませんが、多種多様な事例と軽妙で説得的な語り口、さらに、いかにして「エッセンシャル思考」を実行していくかという具体的な思考法が記述されている点に本書の妙味があります。手軽に読めるうえ、文字通りエッセンスが凝縮された本になっておりますので、「エッセンシャルな事柄に人生の時間を使う」ためには具体的どのような思考・行動をするべきなのかという視点を得るために読んでみる価値があるのはもちろん、「大事なことだけに集中する」「些末なことを切り捨てる」という大胆な生き方が重要だと頭では分かっているけれど、心...

「市民政府論」 ジョン・ロック 星3つ

【近現代憲法の思想的起源】

教養書 「市民政府論」 ジョン・ロック 星3つ
1. 市民政府論日本国憲法が基本的人権の擁護を柱としていること、政府が存在し様々な活動を通じて国民生活を支えていること。これらは中学校の社会の教科書に載っている内容ではありますが、このような言説の中では基本的人権の存在や政府の存在が自明になっており、なぜ、基本的人権は存在する(べきな)のか、なぜ(民主的な)政府が存在する(べきな)のかといったことはなかなか語られません。こういった発想は優等生的ではないのかもしれませんが、なぜ基本的人権や民主的な政府の存在が自明に良いとされているのか、疑問に思ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。本書「市民政府論」はそんな疑問に答える著作の一つとなっております。基本的人権や民主的な政府が当たり前ではなかった時代、その存在を論理的に正当化しようとした人々がおりまして、その代表格の一人が本書の著者であるジョン・ロックになります。なお、「市民政府論」はロックの著作である「統治二論」のうち後編にあたります。現在は岩波文庫から前後編が収録された新訳が出版されておりますので、そちらを手に取るのがいいかもしれません。...

「新築がお好きですか? 日本における住宅と政治」 砂原庸介  星4つ

【住宅政策研究 新築持家過剰供給社会の理由】

教養書 「新築がお好きですか? 日本における住宅と政治」 砂原庸介 星4つ
1. 新築がお好きですか? 日本における住宅と政治近年、空き家や災害復興を中心に、住宅問題はとみにクローズアップされています。過疎化と少子高齢化が直撃している地方では社会問題化するほど空き家が増えておりますし、(特に東日本大震災の)災害復興においても、「これから人が増えることはない」ことを前提とする非常に困難な住宅や「街」の移転・再建が議論されています。また、住宅問題とかかわりの深い「都市計画」という単位にまで視界を広げれば、都会もこの問題とは無縁ではでありません。東京やその周辺ではタワーマンションが林立して価格はバブルの様相。少子化のご時世に小学校が足りないなどという悲鳴が自治体から聞こえてくることさえあり、「保育所建設反対」問題がニュース番組やSNSを騒がせたりもしています。そんな中でタイムリーな出版となったのが本書です。主に戦後の住宅政策について概説しつつ、「持家推奨」「開発優先」な日本政府の政策が今日の状況を招いたことが示唆されます。やや「政治」理論的な面が薄く、新しい概念の提示などがあまりないことは難点ですが、旬の「住宅政策」について総覧した、「これ一冊!」的教科書...

「分裂と統合の日本政治」 砂原庸介 星4つ

【小選挙区比例代表制導入と政治家の行動変化】

「現代日本の官僚制」 曽我謙悟 星4つ

【政治制度が官僚制に与える影響】

「現代経済学」 瀧澤弘和 星4つ

【「経済学」の最新分野を概観】

新書 「現代経済学」 瀧澤弘和 星4つ
1. 現代経済学古くは傾斜生産方式や所得倍増計画、最近ではアベノミクスなど、どの政権でも経済政策は中心的な分野として扱われ、人々の生活に大きな影響を与えてきました。海外でも、例えば最近の米国における大幅減税と財政出動はトランプ大統領の目玉政策の一つです。そんな経済政策に理論的枠組みを与えてきたのが経済学という分野。共産主義退潮の後は(新)ケインズ主義と新古典派が主要な流派として語られることが多かったのですが、近年になって経済学の捉え方、経済に対する焦点の当て方が多様化しており、経済学の枠組み自体が決定的に変化しつつあります。本書の副題である「ゲーム理論・行動経済学・制度論」がまさにその変革を代表するキーワードと言えるでしょう。本書の序章でも触れられている通り、最近のノーベル経済学賞はこれらの分野の第一人者が次々と受賞しています。そして、入門レベルの経済学の知識を前提に、そういった「現代」の経済学をこれまでの経済学と対比させながら、古今の繋がりとブレイクスルーを過不足ない記述で分かりやすく伝えてくれているのが本書。新しい経済学の流れを概観するのにうってつけの新書です。...

【社会学】「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」 デヴィッド・クレーバー 評価:3点

【「クソどうでもいい仕事」と資本主義の関係

【ブルシット・ジョブ】無意味な仕事ばかりが増大していく背景を社会学的に分析した良書 評価:3点【デヴィッド・クレーバー】
1. ブルシット・ジョブイェール大学准教授やロンドン大学教授を歴任した社会人類学者、デヴィッド・グレーバー氏の著書です。グレーバー教授は社会人類学者としてはもちろん左派アナキストの活動家としても知られており、“Occupy Wall Street ”[ウォール街を占拠せよ](※)運動でも主導的な役割を果たしたことで一躍有名になりました。※リーマンショックの直後、金融機関の救済等になかりのみ奔走し、若者の高い失業率等に対して有効な対策を打てなかったアメリカ政府に対する抗議運動。本書の他にも「負債論──貨幣と暴力の5000年」や「官僚制のユートピア──テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則」といった著作があり、刺激的な理論を通じてアカデミズムと現実社会を積極的に繋ごうとしていた学者でもあります。そんなグレーバー教授が2018年に著したのが、本作「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」。原題は“Bullshit Jobs”のみですが、邦題では「クソどうでもいい仕事の理論」という副題が付されています。さて、この「クソど...

「現代日本の政党政治」 濱本真輔 星4つ

【選挙制度改革がもたらした政党・議員の変容】

【選挙制度改革を検証する】教養書「現代日本の政党政治」濱本真輔 評価:4点【政治学】
大阪大学准教授の濱本真輔さんによる著作で、専門的な内容がふんだんに盛り込まれたいわゆる学術書にあたる本です。その内容は、小選挙区比例代表制への移行を中心とした、1990年代の政治改革の効果を検証するというもの。二大政党制を志向し、派閥を中心とした分権的党内調整によってではなく、首相や党執行部による政策決定を目指した政治改革の現時点までの経過と結果が様々な観点から論じられております。全体的にやや散漫で決定的なことが書いていない(導出できていない)なと思う部分もありましたが、政党を取り巻く制度が各アクター(特に政治家)をどう動かすのかという視点に興味のある方で、ある程度、政治学について下積み的知識がある方にとっては面白く読める本だと感じました。目次序章 本書の目的第1章 選挙制度改革と現代日本の政党政治第2章 議員、政党組織、政党政治第3章 小選挙区比例代表並立制の定着第4章 政党中心の選挙環境への変容第5章 個人中心の選挙区活動、選挙運動の持続第6章 族議員の変容第7章 分権的政党内制度の変容と持続第8章 事後調整型政党政治の持続第9章...

「住宅政策のどこが問題か」 平山洋介 星4つ

【日本の住宅政策を概観する】

【住宅政策の手軽な概説書】新書「住宅政策のどこが問題か」平山洋介 評価:4点【政治学】
目次第1章 住宅所有と社会変化第2章 持ち家社会のグローバル化第3章 住まいの「梯子」第4章 住宅セーフティネット感想あまり注目されない分野である住宅政策に光を当てた新書。住宅政策という個別の政策分野への理解が深まるだけでなく、戦後日本における経済政策の全体的な特徴や、これから日本が進むべき道も見えてくる良書です。第1章では、日本の住宅政策の概要が分析されます。日本の住宅政策の特徴が、就職→結婚→出産(夫が働き妻が専業主婦)という「標準」ライフコースを想定し、そのコースに当てはまる人を優遇していることが述べられます。若年層や新婚世帯向けの公団住宅の供給、住宅ローン減税のような家族の持ち家取得援助などがその具体的な政策です。「標準」ライフコースを辿る人々を小規模賃貸から大規模持ち家へという住宅の「梯子」を上っていく単線コースに誘導する仕組みが整えられてきたわけです。日本全体の所得の伸びとともに、新中間層となった人々がその梯子に殺到していったのが戦後の流れではありますが、そういった「標準」ライ...

「忘れられた日本人」 宮本常一 星3つ

【過去の日本人の真の姿が生々しく著述される】

新書 「忘れられた日本人」 宮本常一 星3つ
1. 忘れられた日本人国際化が進み世界的に人の交流が活発になっていく中で、国境の存在感がますます曖昧になっている現代。欧米では移民に対する反発を通じて、「~国民であること、~民族であること」を強調する集団が力をつけてきています。日本でも観光客のみならず、事実上定住している外国人の数は増え続けており、更に外国人労働者の受け入れ条件が緩和されるなど、国際化の波に乗ろうとしているわけですが、その一方で、外国人への侮蔑的な発言を公然と行う人も、SNS上であれ、路上であれ、増加しているように感じます。もちろん、日本人のマジョリティとは異なる文化的背景の中で育ってきた人々の数が増えてくれば、 お互いの文化が溶け合って、折衷的な良い新文化が生まれることも期待できる一方で、 既存の日本的文化との軋轢も当然に生まれてくるでしょう。そういった点で、差別心とまでは言わないまでも、日本人的に暮らしてくれないなら、日本のルールを守ってくれないなら(この「ルール」は法律というより慣習のことです)、来てくれなくてもいい、あるいは、来るのは仕方がないが、既存の秩序や生活が乱されないか心配だと...

「二大政党制の崩壊と政権担当能力評価」 山田真裕 星4つ

【政権交代前後の国政選挙と有権者行動分析】

「利己的な遺伝子」 リチャード・ドーキンス 星5つ

【遺伝子に操られる「人間」】

「コラプション なぜ汚職は起こるのか」 レイ・フィスマン他 星3つ

【「汚職」研究の入門書】

教養書 「コラプション なぜ汚職は起こるのか」 レイ・フィスマン他 星3つ
1. コラプション なぜ汚職は起こるのかボストン大学の経済学者レイ・フィスマン教授とカリフォルニア大学の政治学者ミリアム・A・ゴールデン教授による「汚職」についての共著。二人とも異なるアプローチから「汚職」を研究してきたこの道の大家であり、それでいて本書は一般向け(といっても「汚職」の普遍的構造に関心を持つ「一般」向けですが)の著作になっております。学術書ではないことから事例中心の記述となっておりますが、個々の汚職を個人の道徳的資質の問題として矮小化するのではなく、様々な汚職の事例を「均衡」という思考枠組みの中で捉え、学術的な視点から論じていくのはまさに本格派といったところ。度肝を抜かれる面白さとまではいきませんでしたが、この分野に興味がある方にとって知的な興奮をもたらしながらも肩の力を抜いて読める本だといえるでしょう。2. 目次第1章 はじめに第2章 汚職とは何だろう?第3章 汚職がいちばんひどいのはどこだろう?第4章 汚職はどんな影響をもたらすの?第5章 だれがなぜ汚職をするのだろうか?第6章 汚職の文化的基盤とは?第7章 政治制度が汚職に...

「孤独なボウリング」 ロバート・パットナム 星4つ

【繋がりが希薄な社会と「社会関係資本」】

【社会学】「孤独なボウリング」 ロバート・パットナム 星4つ
1.孤独なボウリング「社会関係資本」という概念に光をあて、様々な分野に影響を与えた本です。著者のパットナム教授はこの本で一躍スター研究者となりました。ご近所づきあいや会合などの社会的紐帯の減少という、誰もが個人としては感じていることを米国全体というスケールで分析し、その原因、そして影響を社会的・政治的なものに結びつけた大著。もはやどの分野でも無視できなくなった「社会関係資本」をアカデミック界に知らしめた作品として、非常に読みごたえがありました。2. 感想本書は5部構成となっており、そのうちメインとなるのは第2部から第4部までです。 第2部では、社会関係資本の濃淡が20世紀のあいだにどのように推移してきたかが膨大なデータとともに語られます。政治参加・市民参加・宗教参加・職場でのつながり・慈善活動・インターネット。わたしたちをとりまくあらゆる「繋がり」が分析の対象となりますが、驚くことに、どの分野を分析しても結論はただ一つに収斂していきます。それはすなはち、米国における「社会関係資本」が、20世紀初頭に増加→大恐慌期に一時的減少→...

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