アニメ映画 「響け! ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」 監督: 石原立也 星3つ(後編)

響け! ユーフォニアム
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1. 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~ (後編)

「響け! ユーフォニアム」のアニメシリーズで第3期に相当するアニメ映画になります。本記事はレビューの後編で、前編はこちらです。

アニメ映画 「響け! ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」 監督: 石原立也 星3つ(前編)
1. 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~ (前編)同名の小説を原作とするアニメシリーズの第3期に相当する部分ですが、TVシリーズとしてではなくアニメ映画として公開されました。原作の著者は武田綾乃さん、アニメ版は京都アニメーションが手掛けています。原作はともかくアニメ版は私もファンでありまして、本ブログでも継続して取り上げている作品の一つです。アニメ版の第1期、第2期のレビュー及び原作小説のレビューは以下の通りです。序盤~中盤にかけての部活人間関係&スポ根の在り方という本作の原点にまつわる展開の良さに敬意を表しつつも、2冊分の小説を1つの映画に纏めているからか、終盤を中心に粗雑さや異様な駆け足感もあってやや「濃密さ」の不足を感じ、星3つとしました。お勧めできる作品ではあります。2. あらすじ悲願の全国大会出場を果たした北宇治高校吹奏楽部だったが、全国大会での評価は最低ランクである銅賞。悔しさを噛みしめながらもさらなる躍進を胸に秘める部員たち。しかし、3年生が引退したいま、目下の課題は部員集めだっ...

充実していた序盤~中盤に比べ、あまりにも駆け足感が強かった終盤の展開。やや残念だったことは否めません。原作小説2冊分を1本の映画にしている弊害なのかもしれませんが、(リズと青い鳥を別立てで製作しているとはいえ)こちらも前後編でやってほしかったなぁと感じてしまいます。特段「悪い」シーンはないのですが、課題もトラブルもなく進行する映像には退屈さがありました。

2. あらすじ

1年生がもたらした波乱も見事解決し、先輩としての主導力を見せた黄前久美子(おうまえ くみこ)。京都府大会も無事突破し、合宿など部活の練習に打ち込むのはもちろんのこと、あがた祭りでの塚本修一(つかもと しゅういち)や高坂麗奈(こうさか れいな)との交流、父親に問いかけられて将来のことに思い悩むなど、部活以外でも様々な経験や葛藤を積み重ねていく。

そして迎えた関西大会、OBOG達が見守る中、北宇治高校吹奏楽部は2年連続の全国大会出場へ挑むのだが......。

3. 感想

1年生編が終わるとやたらに展開が早くなり、一人ひとりの登場人物や一つ一つの事件をほとんど掘り下げないまま映画が進行してしまった印象です。置いていかれた、という感じが強かったですね。

鎧塚みぞれ(よろいづか みぞれ)と傘木希美(かさきのぞみ)の組み合わせについては「リズと青い鳥」で描いているため省略もやむなしですが、顎関節症で演者を退くことになった加部友恵(かべ ともえ)や、部長として様々な悩みを抱えながら行動していたはずの吉川優子(よしかわ ゆうこ)、そしてもう一人の主人公ともいえる麗奈についてはあまりにも描写が少なすぎ、唖然としました。これまでのシリーズでも準主役級だった優子と麗奈の扱いがこれではいままでの感情移入が否定された気になりますし、加部先輩に至っては「怪我による引退」と初めてスポットライトを当てておいて梯子を外してしまった感があります。京都府大会もいつのまにか通過したことになっており、合宿の描写も極めて薄く、田中あすか(たなか あすか)を中心とするOG勢も義務的に出した雰囲気さえあります。月永の父親がライバル校である龍聖高校の顧問であるという設定も活かされませんでした。久美子と秀一の関係にいたってはこんな重要なことをいかにもあっさりと、という印象です。おそらく(原作未読ですが)原作で関西大会までに起こった事件をとりあえず形式的にでもこなしておこうということなのでしょうが、そんなやり方では楽しい映画になり得るはずもありません。

こんな展開ですから、関西大会での敗北に対する悔しさというものを、映像が空元気に発するように多くの視聴者が感じ取れたかは疑問です。従来のテレビシリーズで濃密に描かれていた複雑な人間関係や厳しい指導、合宿でのひと悶着からもたらされる技能・精神両面での成長などが「省略」されてしまっていたため、そういった努力や必死さの描写から来る「本番」の重さ・濃さがどうしても小さくなってしまいます。もちろん、第1期の焼き増しのような演出をされても困りますが、新入生を加えて三年生が抜けたのですから、そこから新しく生じた演奏の悪い傾向とそれを乗り越える様子などが少しでも描かれていればまだマシだったのかもしれません。もちろん、そうなると関西大会敗北の理由付けが難しくなりますが、以下のような状況をもっと上手く映像的に説明すれば「努力」描写があってからの敗北でも自然な結果だったでしょう。

本作では敗北への前振りとして、久美子と麗奈の「今年は(1年生が)弱い」トークの伏線と、「龍聖が新顧問で成長」の伏線がありました。ですが、そんなあからさまなことをしなくても、実力に劣る中川夏紀やブランクのある傘木希美をコンクールメンバーに選出しなければならない苦しい台所事情をもっと強調すれば良かったのではないでしょうか。合宿等でも滝先生ほか指導陣の求めるレベルについてこれていない描写をする機会はあったでしょうし、「つい昨年と比べてしまう」のようなシーンだって入れられたはずです。香織先輩(中世古 香織 なかせこ かおり:麗奈に次ぐトランペットの実力者)とあすか先輩(田中あすか:抜群の実力を持つユーフォニアム担当)の高音低音のダブルエースが抜けたにも関わらず、補充メンバーで強キャラ描写は低温パートの月永求(つきなが もとむ)と鈴木美玲(すずき みれい)だけで、特に演奏の華ともいえるトランペットで穴が大きい。久石奏も夏紀より上手いだけでずば抜けて上手い描写はないからユーフォも弱体化かもしれない。二年生の成長描写があるのは久美子だけで、それも演奏技術ではなく精神面。原作ではもっと細かく説明があるのかもしれませんが、映画でもそのあたりを前面に押し出して昨年度にはない「焦り」が出ればそれはそれで熱かったでしょう。もがいても届かない気持ちは青春スポ根ものにぴったりのはずです。

終盤のまとめとしては、もっと「敗北」を劇的に演出できていれば一つ抜けた作品になったかもしれないという思いが強いです。優子が最後に行う「きっと明日につながる」演説もテンプレ気味であり、全体的として三年生の存在感が弱くなっています。最終学年として臨む大会であるからにはもっと濃く、様々な趣向を凝らして描き、無念を露わにすれば序盤の感動を持続できただろうという面では惜しい作品になりました。

ちなみに久美子と秀一の関係ですが、個人的には「恋も部活も一生懸命、むしろ両輪で上手くいく」という展開が好みなので、この視点に限ればむしろ関西大会敗北はなんとなくほっとしました。また、結局のところ結論が出なかった「将来のこと」は第4期(三年生編)への伏線なのでしょうね。父親の顔をぼやかすのは「親との関係」というテーマから逃げるアニメのようで良くないと直感的には思いましたが、後から振り返れば、久美子は自分の将来に対する想いに自信がなく、父親を直視できないという暗喩かもしれないとも感じて判断を保留中です。次の作品で久美子が両親とどう渡り合うのかに期待ですね。そう思うと、関西大会敗北は「将来」に向き合えてない久美子が必死さや精神的なものでライバル校に勝てていない的なところもあったのかもしれません。今回は久美子がユーフォニアムのエース格でしたが、前年のエースであったあすか先輩は自分の将来のことまでしっかりと考えて部活に取り組んでいましたから、久美子がまだそこに達せていないということを示しているのかもしれませんね。

4. 結論

後半は辛い意見ばかりになりましたが、前半と合わせれば星3つが妥当でしょう。シリーズのファンならば視聴すべきですし、次回作も見に行こうと思わせるクオリティではあります。

姉妹編アニメ映画「リズと青い鳥」のレビューはこちら

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