明日も物語に魅せられて

読んだ小説や新書、教養書の書評ブログです。
アニメや映画の感想もたまに書きます。
やや辛口ですが、本当に良いものだけを
高評価にできればと思っています。




カテゴリ: 小説(評価)

アメリカのSF作家、ダニエル・キイスの作品で、1959年に中編として、そして1966年には長編に書き直されて発表されています。ネビュラ賞とヒューゴー賞という権威ある賞を受賞しており、日本でも2015年に新版が出るなど、定評ある古典として読まれ続けています。

感想としては、「手堅い名作」という印象。斬新な設定で唯一無二の地位を確立しており、特殊な題材ながら人を選ばない筆致には素晴らしいものがあります。一方で、これほど突飛な設定ながらあと一押しとなるようなどんでん返しなどがないところはやや肩透かしでありました。

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ドイツの児童文学者ミヒャエル・エンデの作品。「モモ」と共に彼の代表作として扱われることが多い著作です。児童文学といえど単行本で600ページを越える大作で、岩波少年文庫版では対象が「中学以上」となっている読み応えのある大作。「ネバーエンディング・ストーリー」という題で映画化もされています。

感想としては、読み手を選ぶ作品だなという印象を受けました。幻想的なファンタジー世界の造形は見事ですし、恵まれない環境で育った少年が力を手に入れて慢心し、やがてその慢心から身を滅ぼしかけるもののそれを克服して最後は真理に到達する、という物語も王道なりに楽しめます。ただ、こうした「ヨーロッパ的ファンタジー世界」を受け入れる心持ちが最初からある人以外には展開が唐突で突拍子もなく思えるでしょうし、主人公も万民に受け入れられる人物かといえばそうではないと感じました。

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芥川賞作家である田辺聖子さんが訳し、絵草子画家として著名な岡田嘉夫さんの美麗な挿絵が多数掲載された作品。ダイジェスト版の源氏物語が読みやすい訳で収録されており、手に取りやすい日本文学の古典となっております。

1984年の出版ですが、むしろ現代語訳としても全く古びておらず、近年の過度に崩した訳などよりはよほど読書に値するもので、源氏物語の特殊な世界を気軽に堪能するにはうってつけでしょう。

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「不思議の国のアリス」に並ぶルイス・キャロルの代表作。「不思議の国のアリス」については以前に記事を書きましたが、その続編たる本作も面白おかしいナンセンスジョークに満ちています。


感想としてはほとんど「不思議の国のアリス」と同じなのですが、社会風刺が多かった印象の前作と比べ、こちらは純粋なジョークに特化している印象です。アリスと登場人物たちとの滑稽なやりとりはそれそのものの面白さもさることながら、数々の作品の「引用元」になっていることに思いを馳せながら読むと興味深いものです。

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1960~70年代にかけて一世を風靡した立原正秋さんの作品です。1966年に直木賞を獲っておりますが、それまでに芥川賞の候補になるなど、純文学も大衆文学もこなす万能の作家でした。本作は根津甚八さんと大竹しのぶさんの主演でテレビドラマにもなっています。

感想としては、現代の感覚からすれば「ありえない」作品です。それをもってこき下ろす人がいてもおかしくありません。一般的に考えれば、純粋な娯楽作品としてこの21世紀に読んで楽しい作品ではないでしょう。ただ、この作品・作家が「人気だった」ということを踏まえて読めば良い洞察を得られるのではないかと思います。

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「海と毒薬」や「沈黙」で有名な、戦後日本文学を代表する作家の一人、遠藤周作の作品。解説でも「軽小説である」と言及されている通り、遠藤周作の名声を押し上げた文学作品たちとは一線を画す、すらすらと呼んでいける青春小説です。

このように紹介するのも、多分に時代性のある大衆文学過ぎまして現代の小説として通用するとは言い難く、小説の構成上も難ありと思った次第。やはり遠藤周作は重厚な文学作品にこそ本領を発揮するのでしょう。

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言わずと知れた文豪、太宰治の短編集。彼が記した小説の中でも、女性を主人公にした告白体小説ばかりを集めたのがこの作品です。

女性の気持ちをよく汲みとっていて、女性ファンも多かったとされる太宰。とはいえ、あまりにも古めかしい女性ばかりが描かれていて、当時の女性(それも熱心な文学ファンの偏執狂でしょう)の心は捉えらえたのかもしれませんが、現代まで通じる古典になってはいない作品でした。

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タイトルだけならきっと知名度100%なのではないでしょうか。数学者ルイス・キャロルによって記された児童書で、1865年刊行ながら今日まで全世界全世代で幅広く愛されている作品。「アリスの世界観をモチーフにした」が枕詞のエンターテイメント作品が製作されない年はないくらいに、古典として確固たる地位を確立しています。

そんなポップなイメージとは対照的に、英語独特の表現や時代背景を反映した冗談が多いためにやや難解になってしまっているのが日本語翻訳版です。河合祥一郎氏の名訳をもってしても物語を十分に楽しめるとはいえないでしょう。ただ、「アリスの何が斬新だったか」を意識しながら読めば、特に創作に携わる人々からの人気が高いのも頷けます。

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1947年の初版発売以降、日本文学の古典としての地位を不動のものとしている作品。名実ともに太宰治の代表作でしょう。ピースの又吉さんやオードリーの若林さんなど、本好きのお笑い芸人も太宰を好きな作家として挙げるほどで、人気は今日になって勢いを増しているのかもしれません。

とはいえ、この作品を好むことができるのは、ヒロイックな登場人物たちに自己投影できるような根っからの読書好きではないでしょうか。旧道徳の退廃と新しい時代の到来の中で流行小説として人気を博したのは分かりますが、今日の日本や世界における、道徳的経済的な没落・凋落の深い部分を捕らえていると言えるほど普遍的な作品ではないように思われました。

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インド系アメリカ人の作家、ジュンパ・ラヒリさんの小説。「インド系アメリカ人」という点がこの作家の特徴を端的に表しておりまして、アメリカに住むインド移民を主人公とした作品でアメリカ及びインドでも著名な作家となっております。

優れた筆致は確かで、星3つをつけようと思ったのですが、そこに至るにはやはり、小説(=フィクション)としての面白さがやや欠けているように思われました。描写や題材の選択は巧みなのですが、あくまで人生や日常の印象的な一場面を切り取った以上のものがなく、優れたノンフィクション(伝記・ドキュメンタリー・エッセイ)で代替できてしまう印象です。

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