町田洋さんの中短編集。「夏休みの町」で第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した新進気鋭の漫画家です。流行かつ王道の漫画表現とは一線を画し、細い線とモノトーンで描かれる独特の絵柄と不思議な雰囲気の物語が特徴です。

とはいえ、感想としては「こういうマイナー漫画よくあるなぁ」という印象。幼少期への憧憬を描いた「青いサイダー」も、大学生の青春とSFを混ぜた「夏休みの町」も、日常に少し変わったファンタジー/SF要素を入れて、あとは多くを語らないという手法。いかにもサブカルチャー感がありますが、それ以上ではありません。悪くはありませんが、好きな人は好きの域を出ないでしょう。



〇あらすじ

・「夜とコンクリート」

あるサラリーマンが会社帰りに声をかけられる。振り返ると、そこには酔いつぶれた同僚と、彼を介抱しながら運んでいる見知らぬ男。ひとまず二人を家にあげるものの、同僚は寝てしまい、見知らぬ男と会話することになる。その男は家に上がるとき、現場も見ないままに「水道出しっぱなしですよ」と家の中の状態を言い当てた。彼はいったい何者なのか......。

・「夏休みの町」

大学生のソウが友人とともにバーベキューの準備を行っていると、丘の上に朽ち果てた大昔の戦闘機を発見する。そして、その近くの草むらでは老人が倒れていた。光線が出る不思議な棒を持っていた老人。その後、老人と再会したソウたちは戦闘機についての話を聞く。あの戦闘機はかつての戦友が乗っていた機体で、戦友は機乗中に未確認飛行物体に連れ去られたという。そして、その戦友を救うために活動しているという老人。半信半疑のまま老人を手伝うことになったソウたちだったが......。


以上2編含む4篇を収録。


〇感想

表題作である「夜とコンクリート」は短編で、メインは中編の「夏休みの町」と「青いサイダー」。最後の「発泡酒」は掌編とでもいうべき作品。いわゆる「間」でアンニュイな感情を表現するタイプの漫画で、書き込みの少ない素朴な絵柄が却って想像力を膨らませ、悲哀や歓喜が行間に滲み出ます。

ただ、マイナーな漫画を探っていけばよくあるタイプの作品であり、「独特の世界観」や「静かな感動」というレッテルを貼れてしまう出来であることも確かです。「夜とコンクリート」は抽象的なことや少し不思議なことを登場人物に喋らせて、あとは曖昧に終わらせれば何か余韻が残った気がするだろうというだけの話ですし、「夏休みの町」も超常現象を出しておいて印象的なシーンをいくつか散りばめ、やはり曖昧に終わらせればそれっぽい話になるというだけの構成。「青いサイダー」は4編の中で一番マシですが、「不思議なオジサンと少年の交流」、「幼少期にだけ見えて、大人になると見えなくなるもの、それが成長を表す」などはありきたりな設定で、ただその設定でゴリ押しするだけの話なので物語としては面白みがありません。

作風に広がりや工夫がなく、似たような作品がだらっと並んでいる印象。何かもう一つブレイクスルーがなければ「ベタなニッチ」で終わってしまう気がしました。