「ミッションちゃんの冒険」というweb漫画で有名になり、現在は「金魚王国の崩壊」などのweb漫画を連載するサークル、模造クリスタルの商業化作品。単巻で完結しております。

「金魚王国の崩壊」のファンなので手に取ってみたのですが、期待外れとまではいかないものの、ややインパクトに欠ける印象。模造クリスタルの特徴である独特のテンポや不思議な世界観もやや淡白に感じられました。



〇あらすじ

危険な魔術書の研究により魔術師ギルドがテロ組織として認定され、解散を余儀なくされてから幾何かの年月が過ぎた。科学技術集団である騎士団の活動により離散した魔術師の多くも逮捕・殺害されてしまい、残るは僅かな数の残党のみ。

そんな中、魔術師の生き残りであるスペクトラルウィザードは孤独な日々を過ごしていた。身体を「ゴースト化」する魔術により騎士団からの逃亡はたやすいものの、指名手配されている手前、孤独を言葉でしか知らなかった頃の生活には戻れない。

そんなある日、魔導書のコピーが見つかったという話を耳にしたスペクトラルウィザード。かつての自分を取り戻すべく、騎士団のアジトに乗り込むスペクトラルウィザードだったが.......。


〇感想

やや中途半端だったというのが感想です。所々に出現するウィットに富んだ表現(「ただひたすら苦いだけの薬」など)は面白く、模造クリスタルらしいと思ったのですが、テーマやストーリー、キャラクターの葛藤に烈しさがありません。潔癖さと卑屈さの間で自己嫌悪に陥る「金魚王国の崩壊」のミカゼちゃんのような、痛切に訴えかけてくるものがないのです。

ただ、「魔導書」の使い方は少し胸にくるものがありますね。地球を滅ぼすほどの力を持っている魔導書であり、作中の魔術師たちはこの魔導書を奪ったり使ってしまったりします。けれども、それは人類を滅ぼしてやろうとする悪意からではなく、かつて存在した魔術師ギルドや、そこでの生活への郷愁と比較した現在の寂しさを埋め合わせるために魔導書を欲するのです。ただ魔導書を研究していたという理由だけで解散させられた魔術師ギルド。解散させられた結果、皮肉にも、魔導書は離散魔術師たちの「思い出」となり、実際に使われてしまう。人間の感情って、そんなものですよね。

広く勧められる作品ではありませんが、模造クリスタルの大ファンというならば買っても良いと思います。