言わずと知れた文豪、太宰治の短編集。彼が記した小説の中でも、女性を主人公にした告白体小説ばかりを集めたのがこの作品です。

女性の気持ちをよく汲みとっていて、女性ファンも多かったとされる太宰。とはいえ、あまりにも古めかしい女性ばかりが描かれていて、当時の女性(それも熱心な文学ファンの偏執狂でしょう)の心は捉えらえたのかもしれませんが、現代まで通じる古典になってはいない作品でした。



〇あらすじ

・「女生徒」

厭世的になる朝、きれいな瞳、醜い犬、洒落た傘、友達との微妙な関係、憧れの先輩。とある女生徒の一日を瑞々しい筆致で描く。


・「千代女」

幼い頃、著名な雑誌で綴り方の賞を獲った「私」。以来、綴り方を続けることを勧める人にも、勧めない人にも妙な苛立ちを感じてしまう。しかし、最初は持て囃されていた彼女も、次第に「過去の秀才」となっていき......。


・「饗応夫人」

戦争で旦那を亡くし、召使の「わたし」と二人で暮らすご夫人。歓待好きの彼女はどんな客人もうんともてなし、無理をしてしまうこともしばしば。そんなご夫人の家に上がり込んできたのは、あまりにも図々しい医者、笹島先生だった......。


これらを含む14編を収録。


〇感想

文体はいかにも「乙女ちっく」な感じで、抵抗感のある人はなかなか読み進めないでしょう。昔の少女漫画よりもさらに極端で、男の手酷い妄想が入った空想の女性・女の子という感のある主人公ばかりなのですが、これで当時は女性に人気というのですから信じられません。

内容としても、かつての女性が置かれていた独特の境遇に端を発するものが多く、そういった境遇を当然視しながらも様々なことをくよくよと考えているとこうなるのだろうなぁという感じの、ただただ共感を誘うための媚びがはびこっております。主人公が自分の恥ずかしい面、惨めな面、痛々しい面を吐露することで、「太宰だけは自分をわかってくれている」と思いこむタイプの読書家を惹きつけそうではありますが、本書の役割はそこまで。普遍的で誰もの胸を衝き動かそうとして書かれたものではありませんし、意図せずしてそのような効果が生まれているということもありません。

独特の文体を差し引いてみればいたって凡庸な話が多く、つまらない読書でした。