2014年から2018年の4月まで「週刊少年サンデー」で連載していた、駄菓子をテーマにしたショートギャグ漫画。「駄菓子」という一風変わった切り口と、少年誌らしいギャグ運びが魅力です。5月に最終巻となる11巻が発売され単行本も無事完結となりました。

作中では製造元企業の協力を得たうえで様々な駄菓子が登場するのですが、出版不況で特に雑誌が売れない昨今、こうした半ば「宣伝タイアップ専門漫画」になりうる作品が各週刊誌や漫画アプリにあってよいのではないかと思いながら読んでいました。



〇あらすじ

舞台は海沿いにある田舎町。主人公、鹿田ココノツ(しかだ ここのつ)は町の駄菓子店「シカダ駄菓子店」の一人息子として店長である父から跡継ぎにと期待されていた。しかし、ココノツには店を継ぐ気など毛頭ない。ココノツの夢は漫画家になることであり、夜な夜な父に見つからないようこっそりと漫画の原稿を書く日々を過ごしていた。

そんなある日、「シカダ駄菓子店」を一人の美少女が訪れる。その名は枝垂ほたる(しだれ ほたる)。超有名お菓子メーカー「枝垂カンパニー」社長の娘だというほたるがやって来た理由は、ココノツの父である鹿田ヨウ(しかだ よう)を枝垂カンパニーにヘッドハンティングしたいというものだった。それに対するヨウの回答は拒否。「シカダ駄菓子店」の9代目をココノツが継いでくれるというまで店を離れられないというのだ。

というわけで、ほたるは目的達成へのステップとしてココノツの説得に加わることに。以来、たびたび「シカダ駄菓子店」を訪れるようになったほたるは、ココノツやその友人たちと熱い「駄菓子」な日常を繰り広げることになるのだった......。


〇感想

最後は駆け足で終わってしまった(打ち切り?)印象でしたが、全体にテンポの良い掛け合いが多く楽しませてもらいました。駄菓子についての豆知識を踏み台に個性的なキャラクターたちのハイテンションな日常が描かれる、というのが最も端的な説明なのでしょうが、冴えない男子高校生であるココノツとその友人である遠藤豆(えんどう とう)の会話が平成初期のレトロ感に満ちている点や、お色気にもナンセンスにも振りすぎず正統派のボケとツッコミで笑いを取りに来るのは非常に好感が持てました。いわゆる「萌え」や「ハーレム」、「百合」に頼らず、かといってディープすぎるパロディや意味不明なナンセンスギャグ、メタ発言ばかりを散りばめたりもせず、誰もが読める「少年誌に載っているギャグ漫画」を貫いている作品は近年珍しいのではないでしょうか。最後の方は多少、お色気成分が強かった気もしますが許容範囲でしょう。

そんなギャグ漫画である「だがしかし」ですが、漫画内で取り上げられたことでブームになる商品やサービスが目立つようになってきた近年において、こうやって積極的にタイアップを取ろうとしてくれる作品は企業にとっても嬉しいのではないでしょうか。漫画雑誌の売り上げは人口減を遥かに上回る速度で進み、電子書籍を含めても単行本さえ続々と売り上げを落とす中、各雑誌が収益を維持するために他の企業からお金を受け取ったうえで「まるまるその企業の宣伝漫画」を連載してしまうというのもアリだと思います。漫画アプリも無料で読める範囲を相当広くしないと集客できないため収益の内実は相当苦しいらしく、もしペイするならばこういった漫画が載るのも時間の問題なのではないでしょうか。

というのも、そういった漫画を積極的に読んでいきたいと思っているわけではありませんが、そうでもしないと漫画業界からの作品供給の質を維持できないのではないかと考えているからです。雑誌及び単行本の売り上げ減によりプロ漫画家として生計を立てられる人が減っていくでしょうし、たとえ薄給兼業でも構わないと思っていても雑誌やアプリに掲載できる漫画数自体の減少がそういった兼業漫画家の椅子さえ奪っていくに違いありません。アマチュアが自由に発表できるwebサイト発の漫画も増えており、やろうと思えばセルフプロデュースでAmazonを使って売りさばくことも可能ではありますが、そこまで漫画家に負担をかけてしまえば生まれてくる作品の平均的な質の低下は避けられないでしょう。もちろん、現在における出版社主導の編集、宣伝、流通、販売の戦略に問題がないわけではありませんが、バラバラになった個人漫画家の群れがそれを代替するのは難しく、編集者、校正者、アシスタント、パトロンが付いたうえでの漫画家活動の枠を一つでも多く残す策として、タイアップ専業漫画枠を作ってしまうのは悪くないと思います。「だがしかし」のような短い時間でサクサク読めるショートギャグの需要は隙間時間埋めの需要に応えるはずで、なんとか本作程度のクオリティを保てれば宣伝する企業側も出版社も漫画家もある程度の満足を得られるのではないでしょうか。もちろん、折衝するべきアクターが一つでも増えると相当の実務負担がかかるのも事実で、それが重すぎるというのはあり得るのかもしれません。

読み終えた後、ふとそんなことを考えてしまうような、各話に必ず実在の駄菓子が出てくるギャグ漫画の紹介でした。