有名なオペラを里中満智子さんが漫画で描く、「マンガ名作オペラ」シリーズの第5巻です。全巻揃えようというわけではないのですが、表題作である「トゥーランドット」の筋書きが知りたくて購入しました。

いかにも「古典の短編」という印象で、まだ物語というものが洗練されていない時代の粗削りな面が目立った印象です。



〇あらすじ

舞台は王朝時代の北京。皇女トゥーランドットはたいへん美しい姫だったが、彼女に求婚する者は彼女が出題する3つの問題に答えられなければ死刑になるという過酷な婚姻条件を掲げていた。

今日もまた、求婚に失敗したペルシャの王子が紫禁城の前で公開処刑にされてしまう。

その様子を見ていたのが、ダッタン国の王子カラム。彼はトゥーランドットに見惚れ、部下の制止を振り切ってトゥーランドットに婚約を申し込む。

3つの難問を出題するトゥーランドット。しかし、カラムはいとも簡単に答えてしまう。

婚約を嫌がるトゥーランドットに、カラムも一つの問題を出す。それは、まだ名乗っていないカラムの名前を一晩のうちに当ててみろというものだった。

北京中の人々を使って王子の名前を知っている人物を探すトゥーランドット。そして夜が明ける頃、カラムの部下が捕まってしまい......。


〇感想

カラムを庇って死ぬリュウがポイントでしょう。あまりに理不尽な死を選ぶリュウの人物造形は現代の物語では通用しないはずです。普通の観点から言えばただ可哀想なだけで、リュウの死のうえに成り立つトゥーランドットとカラムの愛に現代の読者は困惑や戸惑い、あるいは嫌悪感を覚えるはずです。

しかし、そういった真の勇気、真の愛がトゥーランドットの目を覚ますのです。真の勇気や愛から出る行動は決して名誉を伴うわけでもなく、あまりにあっさりと命を投げ出す姿は犬死に見えるほど。

喝采と栄光の中で死んでいく現代の愛や勇気の代弁者とは違います。

このトゥーランドットの物語ではあまりにも短く単調ですが、「善良な人物が小さなことにあっさりと命を投げ出し、読者を唖然とさせる」ところから始まる物語などもあったら面白そうです。

素直に読んで楽しめるわけではありませんが、古い時代ならではの発想を味わえる作品だと思います。