明日も物語に魅せられて

読んだ小説や新書、教養書の書評ブログです。
アニメや映画の感想もたまに書きます。
やや辛口ですが、本当に良いものだけを
高評価にできればと思っています。




2018年05月

1947年の初版発売以降、日本文学の古典としての地位を不動のものとしている作品。名実ともに太宰治の代表作でしょう。ピースの又吉さんやオードリーの若林さんなど、本好きのお笑い芸人も太宰を好きな作家として挙げるほどで、人気は今日になって勢いを増しているのかもしれません。

とはいえ、この作品を好むことができるのは、ヒロイックな登場人物たちに自己投影できるような根っからの読書好きではないでしょうか。旧道徳の退廃と新しい時代の到来の中で流行小説として人気を博したのは分かりますが、今日の日本や世界における、道徳的経済的な没落・凋落の深い部分を捕らえていると言えるほど普遍的な作品ではないように思われました。

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タイトルの通り、会計関係の実用書で、売上・利益・変動費・固定費の関係と、営業利益・キャッシュフローのそれぞれでみた損益分岐点について、その計算方法と有用性が紹介されています。関係性の図表と計算式とが各ページに分かりやすく記載されており、辞書的に使用するのも効果的な本だと思います。

さて、普段はそんな本をこのブログで紹介することはないのですが、読んでいて思うところがあったので書こうと思います。それは、初等・中等教育における算数・数学の話。「学校の勉強は役に立たないのか」についての話です。

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インド系アメリカ人の作家、ジュンパ・ラヒリさんの小説。「インド系アメリカ人」という点がこの作家の特徴を端的に表しておりまして、アメリカに住むインド移民を主人公とした作品でアメリカ及びインドでも著名な作家となっております。

優れた筆致は確かで、星3つをつけようと思ったのですが、そこに至るにはやはり、小説(=フィクション)としての面白さがやや欠けているように思われました。描写や題材の選択は巧みなのですが、あくまで人生や日常の印象的な一場面を切り取った以上のものがなく、優れたノンフィクション(伝記・ドキュメンタリー・エッセイ)で代替できてしまう印象です。

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2017年の10月から12月にかけて放送された全12話のアニメシリーズ。大きな戦争の後の荒廃した世界を旅する2人の少女が主人公で、様々な意味で深夜アニメの主流派とは一線を画しています。

結局、「少女」を起用せざるをえないという点はもちろん、絵柄も異端とはいえ「深夜アニメ」モノといえますが、静かな世界で2人だけの会話劇で進む(EDにおける声優クレジットの衝撃的な少なさ!)ことや、生や死について旅すがら自然と考えるというストーリーはなかなか良いもので、こういった作品がアニメ―ション業界に一石を投じて欲しいと思うような作品でした。

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挫折と葛藤を抱えた高校生たちの再生を描く青春生徒会物語の第5巻。「元野球少年が過ごす、野球のない夏」がこの第5巻の帯キャッチコピーでして、甲子園の応援から夏祭りまで、全編夏休みの生活が描かれています。第4巻の感想はこちら。

ぎりぎり星3つをつけましたが、「このままベタなラブコメに成り下がらないで欲しい」というのが本音のところ。やや登場人物が物語の道具になっている(いわゆる「キャラクター」になってしまっている)ところがあり、この作品らしさが徐々に失われてきているのではないかと危惧しています。

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ビッグコミックスピリッツで月刊連載されている漫画、「1518!(イチゴーイチハチ)」。私がいま一番新刊発売を楽しみにしている漫画で、特に3巻は近年刊行された漫画単行本の中でも黄金の1冊といえる出来だったと思います。3巻の感想はこちら。

そしてこの4巻、相変わらず高クオリティを保っているのですが、やや心配な要素が出てきた巻でもありました。「諦めた夢に折り合いをつける」という当初の軸が概ね解決してからの展開、連載開始当初の問題設定をひとまず消化したここからが見せ場だと思うのですが......。

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挫折を経験した生徒たちが生徒会活動を一生懸命に楽しむ学園青春物語、「1518!(イチゴーイチハチ)」。私がいま最も注目している作品の一つであり、特にこの3巻は珠玉の出来栄えです。第1巻の感想はこちら第2巻はこちら

生徒会の2年生役員であり、難関国公立を目指す「選抜」コースに所属する三春英子(みはる えいこ)と東慧汰(あずま けいた)にもスポットが当たるほか、烏谷の野球との訣別にも一区切りがつき、ミニクライマックスといった様相。正直、「ミニクライマックス」でこれほどまでに感動できる漫画はなかなか目にできないでしょう。

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高校生たちのささやかな青春をきめ細かいタッチで描く名作(予定)漫画、「1518!」の第2巻です。第1巻の感想はこちら

登場人物紹介兼プロローグだった第1巻に対し、第2巻では怪我により野球を諦めた少年、烏谷公志郎の心の再生にスポットが当たっています。折り合いをつけるということ、目の前のことを楽しむということ、自分との戦いを意識すること。決して説教臭くなく、むしろ一貫したエンターテイメント性に支えられた作品ながら、通底するメッセージが深く切なく染みわたります。

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タイトルは「イチゴーイチハチ」と読みます。前作「GUNSLINGER GIRL(ガンスリンガーガール)」によりニッチな漫画界隈で有名になった相田裕さん。イタリアの対テロ秘密結社が舞台だった前作とうって変わって、現在連載中の本作は日本の高校を舞台にした青春ものです。実は、「バーサスアンダースロー」という相田さんが過去に発表した同人誌作品がベースになっています。

突飛で唐突な物語ばかりが溢れた現代漫画界の中で、繊細かつ丁寧に高校生活を描く稀有な作品となっており、私が新刊を追っている数少ない漫画の一つです。通底するテーマの深さは文学的で普遍的と言えるにも関わらず、エンターテイメントとしても一級品。是非、メジャーになって欲しい作品です。

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