2000年代前半、当時隆盛の兆しを見せ始めていた「オタク文化」に焦点をあてたことから注目された漫画です。

大学のいわゆる「オタサー」を最初に描いた作品ともいえ、そのリアルな「オタク感」からにじみ出る独特の雰囲気は確かに異色で面白いのですが、その斬新性を差し引いたときに魅力が残るかと言われればそうでもない作品でした。 



〇あらすじ

舞台は都内某所にある「椎応大学」。そこには「現代視覚文化研究会(げんしけん)」というサークルがある。

主人公、笹原完士はオタク趣味を外に出せず、オタクであることにやや恥ずかしい感情を抱いていたが、意を決してこの「オタク系」のサークルに入ることにした。そこにいたのはいかにも「オタク」な先輩たちであり、美少女漫画や恋愛シミュレーションゲーム、フィギュア等が満載された部室が笹原を歓迎する。

同級生のイケメンオタクである高坂真琴や、その恋人で「一般人」の春日部咲 。アメリカ帰りのコスプレ好き、大野加奈子らとともに笹原は一人前のオタクとして成長していく。

2年目からは笹原が会長となり、さらに、下級生の朽木学や荻上千佳が加入。同人誌即売会「コミフェス」への参加や恋愛関係の進展を通じ、笹原たちは人間としても成長していく。


〇感想

当時は斬新だったのだろうなぁというのが率直な感想です。

確かに、漫画やゲーム(それもかなりニッチなもの)に嵌りこみ、また、そういった媒体で自分を表現していく人々の集団が形成され始めた時期と重なったので、オタク側から読むと共感でき、非オタク側から読むと未知の世界を描いた漫画となったのでしょう。

しかし、オタクと非オタクの境界線が曖昧になり、インターネットの発展で表現方法が変化している現在から見ると、登場人物たちが「オタク的」なものに対していちいち込み入った発言や行動をとることがかえってくどく感じてしまいます。

加えて、もう一つの軸である人間関係や恋愛描写にはあまりリアリティやドラマ性がありません。高坂のオタク趣味を許容する春日部はあまりにも都合が良すぎますし、美少女である大野加奈子と田中総一郎の恋も不自然で、かつ、周囲の人間関係がそれによって変化しないのも面白みに欠けます。

「趣味が合う」というだけでトラブルのない恋愛関係は存在しないでしょうし、密かに心に抱くものがあるのは班目だけという状態です。しかも、その要素すら彼の中で完結し、物語には絡みません。

また、物語の大本命である笹原と荻上の恋の描き方も微妙です。どちらかが勇気を出せば終わる話であるうえ、特にそれを阻害する要素があるわけでもありません。主人公が編集になることや荻上が漫画家になることも大きな山場なく決まってしまい、多くの漫画のテーマとなっている「夢」や「恋」において見せ場がなかったのは読むのに辛いものでした。

総合すると、あくまで同時代性の突出により頭角を現した作品であり、「オタクを描いた漫画」の系譜に興味がある人は読んでも損しないだろうというところでしょう。