政策研究大学院大学教授、飯尾潤氏の著作で、本作でサントリー学芸賞を受賞されています。

戦後から21世紀までの日本政治の動きを統治機構の面から総覧するという意図をもって書かれているようでしたが、普段から新聞を読んでいる人には不要で、そうでない人にとっては意味不明な本になってしまっているという印象でした。



〇概要

官僚支配、省庁セクショナリズム、政府・与党二元体制、自民党一党優位といった言葉によって表されることが多い戦後日本の政治体制。

その原因を戦前戦後連続論を中心に制度的な側面に求め、それを刷新してあるべき議院内閣制への提言を行う。


〇感想

この本の特徴を示すために、まずは目次をここに引用しましょう。

第一章 官僚内閣制 p3
第二章 省庁代表制 p35
第三章 政府・与党二元体制 p77
第四章 政権交代なき政党政治 p105
第五章 統治機構の比較 p139
第六章 議院内閣制の確率 p173
第七章 政党政治の限界と意義 p211

制度一つ一つをつぶさに把握し、そこに社会科学的な分析を加えるとなれば新書一冊では足りないような項目を、すべて数十ページほどで済ませてしまっています。

ここから生まれるのは、必然的に非常に浅い議論です。本書では、すべての事例において、新聞で書かれていたり居酒屋政治談議で話されていることをそのレベルの分析(というよりコメント?)で表面をなぞるというだけです。

統計学的に分析をして各制度が各アクターに及ぼす影響の度合いを計ってみたり、ある出来事にフォーカスして制度がどう機能したのかをなぞってみるということもありません。

より酷いのは、「首相になればさすがに派閥ではなく国全体のことを考える」「有権者の~意識が希薄になった」というような、感情論的な物言いで結論付けや事実把握をしてしまうことが散見されるところです。

また、小泉首相以降に起こった官邸や党中枢主導による政策決定や選挙運営について、それ以前の政治制度改革との結びつけが弱く、最新の事態も上手く分析できていないところに不満が残ります。

読んで圧倒的に損というわけではありませんが、これを読むくらいなら新聞を読み、各分野について深く掘り下げた本を別々に読んでいく方がいいでしょう。

決して間違ったことを言っているわけではないのですが、政治に興味がある人ならだれもが知っている一般論が8割と、アカデミックの最新の研究から見れば疑問が付されるかもしれない論が2割といった本なので、時間をかける価値としてはイマイチです。