明日も物語に魅せられて

読んだ小説や新書、教養書の書評ブログです。
アニメや映画の感想もたまに書きます。
やや辛口ですが、本当に良いものだけを
高評価にできればと思っています。




「ベルベット・キス」が代表作の女性漫画家、ハルミチヒロさんの短編集。多作な作家さんではありませんが、独自の路線で人気を確立しています。

あまり期待せずに読んだのですが、思いのほか良い作品で面白かったです。女性主人公の話が多く、女性の心理を細かく描きながらも、設定や展開において男性読者に対する訴求力も強いという物語が多いように思われました。絵柄も少年漫画・少女漫画・青年漫画のどれとも区分しがたい筆致で、「性」を強く描きながらも中性的という不思議な作風は魅力的ですね。

続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

人気小説家である森見登美彦さんの同名小説を映画化した作品で、監督は「台風のノルダ」(文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞受賞、2016年地上波放送)や「陽なたのアオシグレ」(第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査委員会推薦作品)で頭角を現してきた新進気鋭の石田監督が務めています。制作も2011年設立のスタジオコロリドが手がけるなど、インディーズ色の濃い布陣。こういった映画が大手から配給され、上映館数もそれなりに確保できるのは近年のアニメ映画ブームによるところが大きいのでしょう。

感想としては、イマイチだったが、そもそもジブリや人気版権もの(ポケモン、ドラえもん、コナン、クレしん、アンパンマン)ではないアニメ映画とはこんなものである、というところでしょうか。「時をかける少女」が当初ミニシアターでの上映のみだったということに以前触れましたが、そういったこれまでのアニメ映画が置かれていた環境ベースでは上出来の作品。しかし、細田守や新海誠がメジャーになり、数々のヒット作が生まれる中でメインストリーム化していった現在では物足りなさが大きいですね。「君の名は。」が普段アニメ映画を観ない層も巻き込んでブームを起こしましたが、その勢いの中で本作のような作品も出てくれば「こんなもんか」となり、アニメ映画のプレゼンスも妥当な位置に落ち着いてくるでしょう。

続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

<恋する本><シビレル本>に続く「新潮文庫の100冊 2018」レビュー。この<考える本>ジャンルは小説が少なく寂しい印象。こんなにも小説以外を入れてくるのは殊に近年の傾向である気がします。<考える本>にこそ小説を多く入れて欲しいと思っている私としては若干寂しく感じるところ。

書影はこれまで33回選ばれている「海と毒薬」。「沈黙」と共に遠藤周作の代表作で、かつてはこの2作品が同時に100冊入りを果たしているのが常態でしたが、近年はどちらか1冊という場合は多いようです。せっかく8月15日を跨ぐのですから、「海と毒薬」の方がうってつけかもしれませんね(新潮文庫版はリンク貼り付けがうまくいかないので講談社版です)。

続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

<恋する本>に続く、「新潮文庫の100冊 2018」レビュー。今回は<シビレル本>です。「シビレル」の定義やポイントが冊子やホームページを見てもよくわからないのですが、ラインナップを見るとどのジャンルにも収まりきらなかった本を詰め込んでる印象ですね。

全体としては<恋する本>よりも一般感覚的には手堅い選出の印象。ただ、個人的に推せる本はそれほどありません。


書影はこれも1969年から皆勤賞の「金閣寺」。購入候補です。 続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

読書好きには知られているであろうイベント、「新潮文庫の100冊」。毎年夏に開かれるイベントで、新潮社が自社出版の文庫からオススメの100冊を選んでプロモーションをかけるというもの。大々的に新聞広告が打たれ、専用の冊子が作られ、書店には必ず専用棚が出来て本が平積みされます。業界のガリバーが選ぶ100冊ということで読書家の中にはその入れ替わりに注目している人も多いでしょうし、逆に夏休みに本でも読んでみようという(特に若年層)読書初心者の入り口にもなるため、小説業界全体にも大きな影響を与えるフェアです。

特にインターネットがあまり普及していなかった時期にはこういった機会で目に触れるか否かが本選びに強く影響を与えたのでしょうし、私自身も夏はふらっと本屋に入ってこの「100冊」から目についたものを選ぶということが何度もありました。良い本に当たれば熱中し、イマイチであれば「これが厳選100冊の1冊かよ」と心中で愚痴を漏らしたものです。

とはいえ、現在はインターネットで誰もが書評家になれる時代。新潮社が選んだ100冊を更に吟味し、読者の皆様により良い本に出合って頂こうと思う次第であります。いまでも毎年100冊を確認し、「購入候補リスト」の参考にしておりますので、自分のための購入検討も兼ねた記事です。新潮社がテーマを5つに分けて100冊を選んでくれていますので、それぞれ記事にしていきたいと思います。


書影は1969年の「新潮文庫ベスト100」時代から50年連続選出の「こころ」。日本文学の代表作ですね。

続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

1953年の公開以来、世界的名作としてその名を轟かせているビッグタイトル。オードリー・ヘプバーンの初主演映画としても有名で、この作品でいきなりアカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得しています。その他にも最優秀衣装デザイン賞や最優秀原案賞も獲得するなど、当時においても大きなセンセーションをもたらしました。

「『ローマの休日』的設定」をつくり出した元祖作品ですので、いま観るとストーリー的にはある意味ベタに見えてしまいます。ただ、役者たちの演技は超一流。当時として前例のない斬新な脚本でここまでできるかと思わされてしまいます。現在も色褪せない「王道」を築いた輝かしい古典として、物語に興味のある人ならば必見の一作です。

続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

以前に紹介した教養書、エスピン・アンデルセンの「福祉資本主義の三つの世界」ですが、読みながらぼんやりと思ったことを備忘のために記事にしておこと思います。


続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

「よつばと!」で有名なあずまきよひこさんの出世作。女子高生たちを主人公にした4コマギャグ漫画、というジャンルは1999年の連載開始当初において斬新であり、現在の日常系4コマの基礎となっている作品だといえるでしょう。

とはいえ、近年の粗製乱造な漫画群とは違います。主に男性読者に媚びた「萌え」に走りがちな漫画や、「メタ」「パロディ」でニッチな笑いばかりを狙いにいく漫画とは一線を画し、ギャグはいたって王道。むしろ、「よつばと!」に通じる普遍的な笑いと感動がある作品です。

続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

芥川賞作家である田辺聖子さんが訳し、絵草子画家として著名な岡田嘉夫さんの美麗な挿絵が多数掲載された作品。ダイジェスト版の源氏物語が読みやすい訳で収録されており、手に取りやすい日本文学の古典となっております。

1984年の出版ですが、むしろ現代語訳としても全く古びておらず、近年の過度に崩した訳などよりはよほど読書に値するもので、源氏物語の特殊な世界を気軽に堪能するにはうってつけでしょう。

続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

アメリカやイギリスなどのアングロサクソン諸国、ドイツやフランスなどの大陸欧州、スウェーデンやフィンランドなどの北欧諸国。同じ先進国と呼ばれていても、これらの国がそれぞれ大きく異なる政策パッケージを実施していることは政治に関心のある人間ならばぼんやりとは感じているでしょう。しかし、それらの国々の特徴を厳密に区分する指標はいったい何なのでしょうか。もちろん、イメージ論で語ることはできましょうし、個別具体的な政策についてはそれぞれの専門及び関心ある分野で様々な議論があるのだとは思います。ただ、数理的にこれといった境界線を示せと言われるとなかなか困ってしまうことも多いのではないでしょうか。

そんな「先進国(=福祉国家)の分類」について論じた、現代の古典といえるのが本著であります。様々な分野の学術書で頻繁に引用されるため、題名を目にしたことはあるという人も多いと思います。

感想としては、これを引用するような文献を読む人は目を通すべきといったところでしょうか。福祉国家が変容していく中で永続的に古典であり続けるかどうかは分かりませんが、まだ決して色褪せてはいない著作です。

続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

↑このページのトップヘ